12 [青春/自分探し]
そう こわいんです
まっくろの未来が わたしが失われ 汚れてしまうことが
読後になんだかもやもやして言葉に表しづらいのだけど、妙に引力のある本てあるじゃないですか。
今回のがまさにそれなんです。
まるでレビューサイトである意義を放棄したかのようなセリフですが(;´▽`A``
この本のテーマは「少女」
6編からなる短編集のタイトルはそれぞれ年齢をさしています。
つまり表題作にして最初の物語の主人公は12才の少女。
年頃の少女の、意識の成長に比べて成長しない自分の身体へのコンプレックスであるとか、
大人のオトコの人の目であるとか、キラキラした砂糖菓子のように甘い淡い恋心が
色を失う瞬間だとか、その心の成長に比して子供の姿のままの自分という器が、
いかにも窮屈そうな様であるとか、そんな成長過程でどんどん変わっていく、
自分自身への戸惑い、困惑、恐怖と、そしてそれまでは「絶対的」なるものであったハズの、
大人たちを見る目の変化をとても印象的に描き出しているように思えます。
フィール・ヤングにて連載。全1巻。
目次は「12」「10」「11」「7」「13」「16」という数字のタイトルと
ページ数が添えられているだけのシンプルなページ。
それぞれの年頃の少女たちが出会う、自分よりもずっと年上の男の人を通して
少女という時期の自分をどこか淡々と見つめていくような、そんな話作りになっています。
姿はまだ子供のように見えるけれど、心は少し前の自分をはるかに超えて
周囲の大人たちを認識してくようになっていく。
性を意識するようになり、それまで解らなかった大人たちの心の機微を
読み取れるようになっていくことで、それまで無邪気で無垢であった自分を急速に失って
「女性」になっていく自分。そして今までの自分を脱ぎ捨てて「新しい自分」に脱皮していくような
それほどに大きな変化を遂げていく自分に、戸惑いながらも人知れず受け容れていく様子が
なんとも切ないような儚いような、そんな気持ちにさせられるんですよ。
電車で見知らぬ男の人に声をかけられて、身の危険を感じながらも
自分の未成熟な身体に密かなコンプレックスを持つ自分が
どこの誰とも知れない男性に求められ、心を満たせる存在であることに
思わずうれしさを感じてしまう意識。
そしてその後親に遅く帰ったことをただされると
女である自分に再び子供の皮をかぶせてしれっと誤魔化す。
男性の自分からは「異質」ともとれる少女という存在。
なにしろ自分は「少女」だった時期が無いので共感はできないのですが、
この物語に出てくる男性たちのようにその子供のような姿に大人の女性としての
意識が宿っていく、未成熟であるがゆえの美しさ。
それを少女自身のモノローグと、見せたいところだけに極力絞って描いているような、
印象的なコマの数々の見せ方に惹かれてしまうのです。
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