パリ 愛してるぜ～ [コメディ]
- 作者: じゃんぽ～る西
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2011/05/21
- メディア: 単行本
「西！フランスが好きか？パリが好きになったか？」
「好きだっ！ いや！ちょっと待ってくれ …… 好きだよ」
私はパスポートを持っていません。
…と言うとちょっと驚かれるのですが、外国に行ったことが一度も無いのです。
今どきは修学旅行先が海外というのも珍しくはないというのに(;´▽｀A``
運転免許証も持たないから身分証明が住基カード一択の私は、
何で海外旅行しないのかと聞かれれば、正直言葉の壁が最も大きい。
だからカタコトながらも体当たりで海外の方にアタックしていける人たちの、
恐れよりもワクワクが優る人たちの感覚が、なんとも羨ましかったりします。
そんな日本の国にヒキコモリな私が旅行記の漫画を積極的に読む機会は
当然ながらあまり無いのですが、今回のこれは実に面白く読めた貴重な作品になりました。
今回はもう、私と同じような方向けにこれをおススメするつもりでご紹介しようと思います！
（偏るなあ）(;´▽｀A``
officeYOUにて連載。全１巻。
今回のマンガは海外の漫画なども多く採りあげていらっしゃる
漫棚通信さんの紹介記事を拝見して読んでみました。
フランスの漫画（バンド・デシネ）に憧れてその修行のためパリに渡った
じゃんぽ～る西さんの海外での生活を描いた実録エッセイです。
しかしこの漫画は「パリの迷い方」という本に収録されていなかった
雑誌掲載分の残り後半部分を収録した作品のようで、前作の存在を
すっかり失念していたのですが、違和感無くこの本単独で楽しめましたので、
とりあえず本屋で見つけた方から読んでも問題無さそうです。
以前こちらでご紹介したテルマエ・ロマエの著者であるさすらいの絵描き
ヤマザキマリさんの旅行記「世界の果てでも漫画描き」も同じ雑誌で連載されていましたが、
やっぱりこういうのは旅行好きが多い女性向けのマンガなのですかね～
まず特徴的なのが著者が男性であるという点。
もちろん女性の旅行記だから共感しづらいとかそういう単純な二元論で分けられる話ではなく、
著者のパーソナリティや漫画に描き起こす時の表現にも拠るのですが、
やっぱり男性視点というのは直感的に自分に馴染みやすいもので、これが意外と重要だなと感じます。
というのも、旅行記って少なからず自分（の国の慣習）と旅行先の人々（の慣習）との「ギャップ」が
楽しいわけじゃないですか。
日本ではこんなことしないけど、パリの人たちはこういう事をするんだ！という。
そのために自分が拠って立つ主人公のキャラクターが自分に近ければ近いほど
その人が感じている驚きが、単純に自分にも理解しやすいものです。
解りやすいかもしれない例を挙げるなら、西さんが現地の同人誌即売会に行くくだりがあるのですが、
ここで西さんが共感できる作品を出品していた女性との出会いがあり、何とか好かれようと
彼女が食べたいと言ったおにぎりを素材の厳選と試行錯誤を経てつくり上げたり、
毎週マンガを描いて見せ合ったりしてウッキウキしてる西さんのエピソードは
男性の身であれば当然共感しやすいのです。
それとこのマンガの特徴かなあと思ったのは、西さんの交友関係の広さでしょうか。
パリに住む西さんを頼って日本から観光にやってきた日本人の友人であるとか、
陽気でイケメンな恋多きイタリア人であるとか、日本語に堪能なフランス人で
何かと西さんに教えてくれる人だとか、バイト先の先輩でフランス人の労働に関する
感覚を体現してくれるマダガスカル人だとか、日本の映画の良さをアツく語る
親日家でゲイのじいさんとか、西さんと同じく日本からやってきてパリで生活している
男性、女性ひっくるめて結構な人々とのエピソードも目白押しで、
パリの名所とか歴史とか、そういう部分は全く入る余地がないくらい。
マンガ好きとしてはフランスの漫画家さんたちの日本とはあまりに違う制作事情であるとか、
パリのアニメ、マンガのイベントでコスプレをしている人に「オタク」と言ったところ
非常にマイナスなイメージとして通じたであるとか、その辺のサブカルに関する
エピソードが特に刺激的でした。
ああ、海外を体験する一番の近道は人と話すことなんだなあと、
その西さんの社交性の高さが改めて羨ましく思ったり。
ちょいと値段はお高い感じになってますが、読めばパリに行ったことの無い人でも
満足感の高い本だと思います。旅行記ものに興味がありましたら是非。
じゃんぽ～る西さんのblog → つつじヶ丘通信
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