Aquarium [ハートフル]
生まれる前からずーっと見守ってきたよ…
杢子(もくこ)は魚と話ができる女の子。
おばのしずかと一緒にいるときは水の中のふわふわした人たちも視えてくる。
「お前は面白いかたちで目が固まってるらしいなあ」
「こちら」では杢子の家の金魚だが、「あちら」では豊かな髭を蓄えたおじいちゃんが
しずかを観て驚いたようにそう言った。
ゆらゆらとした水の中のような魚たちの世界。
物心つく頃には視えなくなってしまうはずの、そこは全ての生命たちが集う母なる海―
コミックジャスティス/コミックゲーメストにて'92~'94年に連載。全1巻。
特徴的な一点鎖線と幻想的な話作りでじんわり温かいテイストが魅力の
須藤真澄さんの昔の作品となります。
前回「振袖いちま」をご紹介した際、Twitterにてお薦めされたので読んでみました。
何も無いはずの空間に手を伸ばし、まるでそこに何かがあるかのように振舞う赤ちゃん。
彼らには水の中のような世界と、そこに住まうゆらゆらした人々が視えるのだといいます。
それは物心つく頃には自然と認識できなくなっていく「魂」が集う場所。
物語は赤子の杢子を介して、美大生だった しずかが、初めて「あちら」の世界を知る
エピソードから始まって、純粋で、時に生真面目過ぎる杢子が徐々に成長しながら
転生を繰り返していく魂たちとの出会いや別れを経験ていく物語です。
キャラクターとしては杢子のおばであり、杢子と同じものが視られる しずかさんが、
大雑把で豪快な性格でありながら、彼女なりにいつも杢子のことを気にかけている
実に懐の深い女性として出てきます。
そして杢子・しずかの二人が誕生する際に、その手続きを行った人(?)であり、
自らも杢子の家の金魚などと生を繰り返しながら
自分の魂の行く先を考え続けている「おじいちゃん」の存在も非常に大きい。
中でもしずかの妊娠が発覚するお話では、普段は杢子を元気付ける気丈な女性であるしずかが、
逆に杢子に自らが新しく生まれてくる生命を宿していることに不安を訴える回は
このお話の最重要にして最も印象的なお話だと思っています。
彼女の子供になることを望んだ少年の姿をした魂クンの台詞がぐっとくるんですよね。
誰もが自ら選んで生まれてきたんだよ
だから人としての生を後悔しないよう目一杯生きよう。
そんな力強いメッセージを温かい物語で語りかけてくる本作。
「長い長いさんぽ」といい、柔らかい絵でありながら、強いメッセージ性を込めてくる須藤真澄さん。
いや 本当凄い作家さんです。(;´▽`A``
うーん…うまく説明できていないのがもどかしい。。
須藤真澄さんのHP → おさんぽ王国
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