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君と僕のアシアト [SF]


君と僕のアシアト〜タイムトラベル春日研究所〜 1 (ジャンプコミックスデラックス)

君と僕のアシアト〜タイムトラベル春日研究所〜 1 (ジャンプコミックスデラックス)

  • 作者: よしづき くみち
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/01/04
  • メディア: コミック


どうかあなたにとって 実りある旅を

前向きに生きたい―
誰もがそう願う。
でもどうしても戻りたいあの日がある。
会いたいあの人がいる。知りたい真実がある。
今よりもっと前に進むために…

スーパージャンプにて連載。
過去「ああっ!女神さま」の藤島康介さんのアシスタントを勤め、
ライトノベルの「魔法遣いに大切なこと」や、
映画化された「フレフレ少女」コミカライズを担当された
よしづきくみちさんのオリジナル作品となります。
こちらでは以前 とよ田みのるさんとの同人誌「交換日記」をご紹介しています。

今も心にしこりとなって残るあの日あの時―
あの人は何を言いたかったのか?
あの日何が起こっていたのか?
そして
もしもあの時ああしていたら―

本日ご紹介するのはタイムトラベルSFものです。
Twitterでお薦めされている方がいらしたので読んでみました。
「ああ、ハイハイ。過去に戻ってやり直したりするアレね」なんて
映画「バックトゥザフューチャー」的なものが浮かんだ方もいらっしゃると思いますが、
この時間旅行ものの他とは異なる大きな特徴として
「タイムパラドクスが存在しない」というのがあります。
タイムトラベルものには必ず付きもののそれが起こりえない理由として、
この時間旅行はシステムがスタートして20年間、舞台となる春日市全域を
スキャンし続けて得た物理・物質・霊質構造を人の脳内に投影し、
あたかも過去に戻ったかのように再現するというものであるという説明がなされています。
大雑把な言い方をすれば、希望する人間に「過去の夢を見させる」
と言い換えられるかもしれません。
過去20年間の春日市市内であれば、その当時の自分や会いたい相手、
記憶から抜け落ちていたあの頃起きたことが完全に再現され、
なおかつその世界に干渉して、現実に起きた事とは異なる結果を起こすことも可能。
つまりあの時告白できなかった想い人に告白することもできるし、そうした場合の
相手のリアクションも当時実際に告白したらこうなっていただろうという
現実味をもったものになります。
ただし、あくまでも本人の脳内で起きた言わばシミュレートのため、そこで何を引き起こしても
ただ一つの変化を除いて、実際には何も変わらない現実が待っています。。
この設定が実に良くできていて、個人的には画期的だなあ!と思いますね。
そして物語の最も大切な、タイムトラベルで起こる唯一の変化―
それは過去を観にいった本人の気持ちなのです。

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2022年春日市粕賀―
父の研究を継ぎ、この脳内タイムトラベルシステムを完成させた風見鶏亜紀は、
(有)タイムトラベル春日研究所の所長として、助手で亜紀に密かな想いを
寄せるものの、時折要らぬ一言が口を突いてしまうのが玉に瑕な宮山と共に、
時折やってくる客が希望する、時と場所に脳内タイムトラベルさせるビジネスを行っています。
しかし依頼料が1件40万円と個人で払うには高額なこともあってか、
研究所は月に片手で数えられるほどにしか客は来ず、常に研究所は赤字続きという零細ぶり。
基本的にはこの春日研究所にやってくる客が、どうしても思い出したい過去の記憶や、
あの時叶わなかった大切な誰かに会いたいという依頼で観ることになる、
その人の忘れていた、もしくは知らなかった真実が見えてくる…というハートフルな物語。
通常のタイムトラベルが現実世界と干渉しあう地続きな世界であるのに対して、
唯一依頼人の心の中でのみ現実と繋がる、いわば過去と現在が干渉せずに
ぶつ切りとなるはずのタイムトラベルであるにも関わらず、現実に戻った後の
依頼人や亜紀の行動で、タイムトラベル前であれば到底起こりえなかったであろう
大きな変化が起こる… 言い換えれば「未来を変えることができる」という点において
通常のタイムトラベルと結果的に同じことを引き起こしているという物語創りが
まず素晴らしいと思えるところです。

img198.jpg

そしてこのお話には大きな伏線となるバックストーリーが存在しており、
こちらがキモだと個人的には思うのですが…
主人公の風見鶏亜紀は、現在から遡ること10年前に東京で発生した、過去類を見ない
大規模な直下型地震の被災者となったことや、同じ年に最愛の妹を
システムの実験時の事故で失ったことで、大きな心の傷を抱えています。
そのため彼女は研究者として、ビジネスを展開する所長として、タイムトラベルで
しばしば感情的になり、我を忘れてしまう依頼人に冷静で理知的になるよう諌める一方で、
大切な人を次々と失った過去をもち、生来の行動的で人情家な性格もあいまって
依頼人が見落としている相手の気持ちに気付かせてあげたり、
「キャンペーン期間中」とかなんとか理由を付けて、別の時間で起きた重要なシーンに
無料で送り込んであげたり、現実世界に戻ってきた後にフォローをしたりと、
依頼人のためにビジネスそっちのけの行動をとってしまうのです。
なのでお話としては毎回依頼人が変わる、単発的なハートフルストーリーかと思わせて、
実は所長である風見鶏亜紀の過去の記憶とリンクしてそのまま彼女の過去の断片を語る
エピソードを続けて描き、徐々に過去の全容が見えてくるようになったり、
それに関連する新たなできごとが発生したりして主人公である亜紀という人物に
どんどん深みが加わっていくのです。この描き方が面白い!と思いますね。

いやーその綺麗な絵柄もあって、正直ありきたりな単発もののエピソードが並ぶ
ハートフルマンガかと侮っていたのですが…見る目無いですね(;´▽`A``

話しの流れとしては現在刊行中の3巻で一区切りついた感じです。
4巻は7月と発売直前ですので、今が読み時だと思いますよ~
(…モチロンいつでも読み時ですけどっ)
それからこの物語の原型となる助手の宮山君と亜紀が
初めて出会ったときのエピソードが
「よしづきくみち短編集 君と僕のアシアト」
に2話ほど収録されていますので、
そちらも併せてご覧になってみるのも良いと思いますよ。


よしづきくみちさんのblog → つちのこ準星群
1話試し読み → S-MANGA.NET

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