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東京バカッ花 [青春/自分探し]


東京バカッ花 上 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

東京バカッ花 上 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

  • 作者: 室井 滋
  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • 発売日: 2009/08/22
  • メディア: コミック


自分はこれでいいのかと悩んだりもするかもしれん
どんな花を咲かせたかったか忘れることもあるかもしれん
「ただ好き」では進まんなくなるとわかると 誰もが突然夢から覚めたみたいになるのんや
そんな時はもっぺん胸に手を当てて思い起こしてみるんやな
自分は何で上京してきたんやろう 何が一番好きやったんやろう…って


親元を離れて一人で暮らす。
高校の頃の友人に、東京の高校に通うため大阪からやってきて
親戚の家を間借りしている人がいました。
彼は高校生らしい多感な少年ではありましたが、
やっぱりどこか大人びていて、話していると時折「生活感」とか「孤独感」とか…
まだ親元から通う生徒が大勢を占めていた自分達とは、違う世界の住人のような
違和感を感じることが度々あったのです。
私自身は実家が今住んでいる場所と同じ都内で、
しかも自転車で30分という恵まれた、と言って良い環境ではあるのですが、
地方から出てきて東京で家を借り、親からの仕送りを貰い、
自分でもバイトをして盆暮れあたりには実家に帰省する…
そんな生活に逆にぼんやりとした憧れを持っていたりもするのです。

演劇の道を目指して、大学に通うため富山から上京してきた女の子―
今回ご紹介するのは個性派女優としてご活躍されている室井滋さんの
ご自身の大学時代の思い出を描いた同名のエッセイ本をコミカライズした作品のご紹介です。
時は昭和50年代。
大学で演劇をやりながら様々なバイトに明け暮れ、
大都会でたくましく生きていく彼女の青春時代…
それを絵本の様にノスタルジックに、そしてふんわりやわらかなタッチで描き出しています。

コミックフラッパーにて連載。全2巻。
早稲田大学に通うために上京してきた演劇少女・ムロイ。
おのぼりさん状態の彼女が東京という大都会で出会う様々な学生たちや
バイト先の人々と出会った時のエピソードを描いた物語となっています。

例えば上京したての入学したてで、それまで演劇のえの字も知らず、
ど素人で飛び込んだ田舎者まる出しの彼女を唯一受け容れてくれた
部員1名の演劇サークル部長・カッチャンとのお話では、
ムロイはカッチャンから演劇の稽古だけではなく
帰郷する学生から出るお古を貰って生活必需品を揃える方法だとか、
バイトは芸の肥やしにするために短期で様々なものをやってみる、とか
彼女の都会暮らしのベースとなる様々な知恵を教わります。
女性だけどいつでもジャージの上下で、化粧っ気もなくカラっとした関西弁。
そして面倒見の良いカッチャンをすっかり好きになったムロイ。
都会に出てきて最初にお世話になった彼女との出会いと、
そして突然の別れ、室井さんはその時彼女に教わったことが
今でも骨身に染み込んでいると語っています。
こういうなんか、親の庇護下を離れて右も左も分からない自分に
親切にしてくれた人との出会いというのは殊更印象深いんだろうなあ。

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印象深いといえば、とある電車内でみかけた女性の二人組みの話が結構好きで、
沢山の買い物をした紙袋を提げ、訛りまる出しで車内でも平気でアイスをほおばっちゃう、
いかにも地方から遊びに来ました、というおのぼりさんまる出しのタマちゃんと、
彼女につきあって仕方なくという体で、相方のなさりように小声で自重を促し
消え入りそうなほど恥ずかしそうにしているアキちゃんの二人組みなのですが、
それが都会では恥ずかしいことと知らないおのぼりさん状態のタマちゃんに
上京したての頃の何も知らなかった自分や地元の純朴な親友梅ちゃんを思い出して
密かに「あー…(;´▽`A``」てなったり、それを恥ずかしいと思って止めようとしている
アキちゃんに同情を寄せたり…始めから東京にいる私にこの時のムロイの感覚が
伝わって、こっちまで苦笑いしてしまう描き方が巧いなあと。

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大学時代は演劇にのめりこみ「自主映画の女王」と呼ばれた室井さん。
しかし作中はそう呼ばれるに至った演劇のエピソードは殆ど無く、
飽くまで富山からやってきて都会暮らしを始めた一少女のお話として、
主にアルバイトや同じ大学に通う奇天烈な友人達とのエピソードを描いています。
故郷とは比較にならないほどの人々が集う大都会で、怪しいバイトに入っちゃった時の話や、
純朴そうな顔で近づいてきた人に気を許してトホホなことに巻き込まれたり、
後から聞いてあぶなかったぁ~と胸を撫で下ろすエピソードがあったり…
都会の胡散臭いバイトの話や、まんまと騙されて次々と英会話のカセットだの消火器だの買わされて
シャレにならない事態になってる知り合いがいたりとか、今の言葉で言えば
「自己責任」が求められる厳しい社会の裏側を垣間見ながら、擦り切れてしまうことなく
なんだかんだで都会の生活に馴れていく姿が清清しいんですよ。

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そういえば以前母親が茨城から出てきて、
東京で女友達と小さな部屋をシェアして住んだ話とかしてくれたなあ。
やっぱり憧れますね、こういうの。


室井滋さんのblog → 室井滋の平凡キング-やっぱりネコが王様
作画担当・たきむらりゅうさんのblog → :: 憧憬 Nostalghia ::

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