薄命少女 [ハートフル]
「そんな…まさか… 娘が……あと一年の命なんて…!!」
今回は異色の4コママンガをご紹介します
医者から娘が残り1年の命であると宣告された父と
酔いつぶれた父親の寝言からそれを知ってしまった娘・佳苗の
1年間を追った物語です
なんとこれを4コマで…
つまりちゃんとオチが付く形式でやっちゃうのが凄いです
漫画アクションで連載 全1巻
「殺し屋さん」の作者・タマちくさんの弟子にあたる方だそうです
自分の遺影を抱えて立つ少女―
実は表紙の遺影部分が切り抜かれていて
カバー裏の本体表紙に描かれた白黒の佳苗がのぞくようになっている
ちょっと珍しい仕様
最初本屋でぱらぱらっと読んだところでは
自分の命が残り1年であることを知ってしまった女子高生の佳苗が
何気ない会話や風景に死を連想させるネガティブな言葉を引っ掛ける
ダジャレ/言葉遊び的なオチをつけていて
ちょっと珍しいけど こういうネガティブワードを使ったちょっとブラックなギャグなのかな?
と思いその場はスルーしてしまったのですが
漫画レビューサイトをされている「謎鳥」さんのところのレビューを拝見したところ
そのレビューが素晴らしく ギャグというより むしろハートフルなのだと判ったので
俄然興味が湧いて読んでみた次第です
娘の余命はあと1年…
佳苗に知られているとは露知らず 父は必死にそれを娘に悟られまいと振舞います
この漫画の真の主役は個人的に この父だと思っています
父親は以前 妻 つまり佳苗にとっての母親も 結婚して程なく同じ病で亡くしており
それはもう必死で 娘が助かるかもしれない手術の費用を捻出するため
娘に内緒で会社のあとアルバイトを入れたり あちこちの金融屋を駆けずり回ったりして
金策をするのです
そして娘もまた 父親が一人思い悩む姿に心を痛めながらも
父親の前では知らぬフリをして 今までどおり普通に接する
互いの気持ちを思いやるがゆえのこの微妙な緊張感がベースとしてあり
そこから 娘がお風呂に入っているときに
「はあ~ 極楽 極楽♪」
と言ってるのに父親がネガティブワードを連想してギョッとなったりする
という感じのネタが展開されていきます
「死」というネガティブなテーマを4コマでギャグにすることによって
あっさりしていて 変に湿っぽくなり過ぎず
「ほら 泣け!」
とばかりのお涙頂戴的臭いをかなり軽減しています
「私の命はあと○ヶ月…」
なんて毎回のように佳苗が死を意識させるカウントダウンをしたり
たまにネガティブワードを連想して一人落ち込んだりはするものの
それ以外のシーンではその振る舞いはごく普通の明るい元気少女 なので
「あれ?妙に明るいけど 結局死ぬ死ぬ言うだけで意外と
このまま何事もなく終わるのか…な?」
というどっちつかずの妙な気分にさせられます
しかしそれもやがて話が後半に差し掛かると
いよいよ 追い詰められた父娘と 二人に関わる周りの人々のドラマが
クライマックスに向けて大きく動き出します
佳苗が唯一自分の命の残り時間を教え 自分を好きになってくれた男の子との事
そして後輩でありバイト先の同僚でもある 意地っ張りで妙にほっとけない少女の事
偶然見つけた 母親の遺書にある衝撃の事実の事
…そして 自分に内緒で必死に娘を救うために駆けずり回った父との事
佳苗は 助かるのか? それとも―
死をネタにすることに抵抗がある方もいらっしゃるでしょう
Amazonでの評価もそこで分かれていたりします
しかし個人的には 決して読後は悪くない作品でした
あらい・まりこ氏のHP → あとりえナスコ
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