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花もて語れ [ハートフル]


花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

花もて語れ 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

  • 作者: 片山 ユキオ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/09/30
  • メディア: コミック


そして作者や登場人物の思いがみんなに伝わった時…
それは読み手であるハナちゃんの思いが、みんなに伝わったってことだ!


声に出して本を読む。
それは物語の感動を人と共有しあうということ―
極度のアガり症で失敗続きの新人OL佐倉ハナは、
新人研修初日からつまづいて落ち込んでいたその日、
どこからともなく聞こえてきた詩を朗読する声に惹き込まれた。
その恋歌は難解な言葉遣いなのに、なぜか優しくも切ない初恋の情景を思い起こさせる…
そうしてハナは「藤色朗読会」の人々と出会った。
「物語の楽しさを『声』に出し、皆でわかちあうこと。そうするとお話はもっと楽しいですよ」
そう言って柔らかくわらう和装の令嬢、藤色きなりさん。
その姿にハナは、小学生時代のほんの数日、
こっそり学芸会のナレーションの指導を通じてハナに朗読の楽しさを教え、去っていった
思い出の先生の姿を思い浮かべるのだった―

月刊!スピリッツで連載。
「本の朗読」をテーマにした作品という、ちょっと毛色の変わった作品ですね。
本の朗読といえば、私は大御所の声優さんなどがテレビの番組として朗読されているのを
たまにお見かけしたり、変りダネとしては漫画家の島本和彦さんが、ご自身の作品を朗読する、
というCDを同人で頒布されていたりします。
この朗読CD、凄いんですよねー。熱が!
原作者自身がキャラのセリフを情感込めて朗読されると、自分が読んでいたときよりも
明らかに情報量が増えるんですよ。
臨場感が増す、といった方がいいかもしれません。
機会がありましたらそちらも聴いていただきたいなと思います。

さて、話を戻しまして声優であり朗読劇もされているという有名声優・坂本真綾さんが
帯の推薦文を寄稿している「花もて語れ」ですが、
マンガで朗読を語る、というこれまたチャレンジャブルな内容です。
お話としては、極度のアガり症で、コミュニケーションが不得手な主人公・佐倉ハナが、
入社した会社のお得意さんの社長から、なんらかの事情で自分の部屋に引き篭もってしまった
社長の娘さんに物語を語って聞かせて頑なになってしまった心を開かせようというもので、
朗読を通してその物語の感動が増すことを伝えるとともに、
自身の意志を他人に伝えることが苦手なハナが、
自分が「伝えたい!」という情熱を表現していくようになる成長物語になるようです。
作中では宮沢賢治の「やまなし」という作品を題材にストーリーが進んでいきます。

他人とのコミュニケーションが苦手なハナは、幼少の頃から空想力豊かで、
よく土手から空を見上げては、自身で物語を創っていたという少女でした。
ハナに関わる朗読好きの人々は、実はそれが「朗読の才能」として必要な要素であると言います。
「視点の転換」と言われる、要は「その物語のキャラクターになりきる」ということが
ハナは自然とでき、それは朗読に併せて表情はもとより、「見上げる」と言ったら
実際に見上げるような仕草になって現れたりします。
印象としては一人芝居をやっているような感じに見えるんですね。
朗読を表現するマンガのつくりとしては、「のだめカンタービレ」のように
セリフの書体、擬音の形、先ほど書いた表情などの仕草、
…そしてその作品の情景をダイナミックに描くことで表現しています。
「クラムボンは笑ったよ。」「クラムボンはかぷかぷ笑ったよ。」
という、サワガニの兄弟の会話で進行する「やまなし」という物語では、
ほんの30cmの川底が、人間の感覚で30mもの湖底として描かれ、そこから見上げる水面の様子や、
自分の体長より遥かに巨大な魚がゆうらりと泳いでいる様が水彩のようなタッチで描かれ、
「サワガニから視た世界」を表現しています。

img523.jpg
それを相手に思い起こさせるのはリアリティ。
作品を読み込むことはもとより、作中のサワガニが実際はどのくらいの大きさなのか、
調べたうえで物語を想像し、相手に伝えるのです。
単に「情感込めて読む」と言っても、実に奥深いんですよ!
実際に聴きたくなっちゃう魅力があります。

島本さんだけでなく、他の方でも自身の作品を朗読したCD発売したら売れるんじゃないかなあ。
マンガ系Podcastで一部朗読とか、しませんかねえ。


朗読協力・朗読原案の東百道さんの「花もて語れ」の紹介記事 → 感動をつくる・日本朗読会
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コメント 2

けんと

この作者、宮澤賢治のことや、当時の時代背景、岩手の風土に対してここまで甘くていい加減な認識なのかとつくづくあきれ返るばかりです。
ハナという未熟な女性をフィルターにしているので、自分の認識ではなくて・・・と言い逃れをしたいのでしょうが、それは通用しないと思います。
非常に不快な漫画です。

by けんと (2012-11-27 16:53) 

meriesan

そ、そうなのですか。
私は全くといって良いほど文学知識が無いもので主にその表現の部分で感心してしまうのですけれど、宮澤賢治がお好きな方にはそういった部分も色々見えてしまうのですね。

by meriesan (2012-12-06 02:28) 

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