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ハイスコアガール [青春/自分探し]


ハイスコアガール(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)

ハイスコアガール(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)

  • 作者: 押切 蓮介
  • 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
  • 発売日: 2012/02/25
  • メディア: コミック


ハルオ… ハルオ…!! お前の気持ちはそれだけか!?

矢口ハルオは落ちこぼれの小学生だった。
算数も国語も図工も、そして体育でさえ…
何もかもダメな彼が唯一誇れるもの、それがゲームだった。
彼は苦痛なだけの学校の授業をやり過ごすと決まってゲーセンに足を運び、
少ない小遣いをやり繰りして格闘ゲーム「ストリートファイター2」を夢中になってプレイしまくった。
周囲には彼に敵う者は無く、それが彼のプライドを支える全て、ゲーセンこそ彼の聖域だった。
…しかしある日、その聖域でハルオは信じられないものを目にする。
大野晶― 彼女はハルオと同じクラスだったが、勉強もでき美人でおまけにお嬢様。
無口でいつも超然としていて何を考えているのか分からない節はあったが、それでもクラス中のマドンナとして男女共に人気がある、ハルオとは正反対の「住む世界の違う女子」だった。
いかにもゲームには縁遠いハズのお嬢様が何故こんな小汚いゲーセンに?いや、それより目を疑ったのは彼女が恐ろしいほどにゲームが巧いことだ…!
(こいつは俺の憩いの場をグチャグチャに乱しているのだ!! 許すわけにはいかん!!)
1991年―湾岸戦争が勃発し、長崎の雲仙普賢岳が噴火し、そして格ゲーブームが訪れたこの年に、
落ちこぼれ少年はヤンキーとオタクとリーマンが蔓延る場末のゲーセンに凛と座すその少女に出会った―。

月刊ビッグガンガンにて連載。
今回は「ピコピコ少年」 「ピコピコ少年TURBO」などで全てを棄ててゲームに明け暮れた自身の少年時代を描いた押切蓮介さんの最新巻をご紹介します。というか今回も同じカンジかな?と思ったのですが創作で、しかも恋も勉強もかなぐり捨ててゲームに没頭した少年時代に、ゲームが鬼強い美少女のお嬢様が現われるという夢シチュエーション!
「ハイハイ モテない男の都合の良いシチュエーション乙」
と一蹴されてしまいそうなお話ではありますが、どうにもこれが!この夢シチュエーションが!私を捕らえて放さないのです…!(ググ
言うなればこれは伊集院光さんの深夜放送のような… なんというか要はいい大人を一瞬で子供時代に引き戻してしまう引力のあるマンガなのです。

時は1991年。前年にはスーパーファミコンが発売され、ファミコンからのユーザーがこぞって今までにないグラフィックや音楽に夢中になっていたこの時代―
今でも根強いファンに支えられた人気タイトルである「ストリートファイター」。そのシリーズの2作目がカプコンからリリースされました。「スト2」はそれまでに無かった6ボタンとレバーのコマンド操作による必殺技のカッコよさと、その駆け引きの面白さでたちまち当時のゲームセンターを中心に全国規模の一大ブームになりました。私は当時RPGが大好きで、親に止められていたこともあってゲームセンターに通うことは無かったのですが、そんな私にさえリュウだのケンだの、昇竜拳をリアルで見知らぬ他人に使って暴行事件になったニュースが起きたりとスト2の凄まじい人気ぶりを度々耳にしていたものです。
物語はそんな約20年前。今30代になっている当時のゲームっ子にはたまらない時代です。

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学校のテストはいつも0点、絵に描いたような落ちこぼれのハルオ。学校では肩身の狭い思いをしている彼が唯一誇れるものはゲームでした。特にスト2では負け無しで連勝を重ね、自らを「豪指(ごうし)」と称するほどののめりこみ具合。しかしそんな彼の大切な聖域である日、クラスメートの美少女・大野晶に出くわします。何故彼女がこんなところに…? 今でこそアミューズメントパークと呼ばれ、カップルでも気軽に入れるクレーンゲームなども置かれた明るくて清潔な店になっていますが、当時はそれこそ「場末の」という言葉がピッタリな、薄暗くて小汚くて、不良どもがたむろするようなそんな怪しげな場所だったのです。そんな場違い感漂う大野さんは、しかしハルオが目を剥くほどにスト2が巧く、彼女に挑んだハルオは自分が情熱を傾けたゲームで負け、自分のプライドを保つ唯一の取り柄を砕かれることを怖れて、思わず禁じ手と周りに認知されていた「待ちガイル」戦法を取ってしまうのです。てか待ちガイルとか、対戦で連勝しまくる相手に「誰も敵わないアイツを止めるのは誰だ!?」と大人も子供もムキになってコインを投入しまくる様子とか、この時代の空気感が実にうまく描かれているんですよね。

とにかくも卑怯な手段で強引に勝ちを拾ったハルオ。しかし直後に黙ったまま憤怒の表情でやってきた大野さんにゲームの筐体ごと蹴り飛ばされ、さらにぶん殴られるという報復を喰らってしまいます。
その後禁じ手を連発したために店に出禁を喰らったハルオは別の店に乗り換えますが、そこでも大野さんと度々出会うことになってしまいます。大野さんはハルオに気づいても一瞥をくれるだけで挨拶も表情すらも変えずに黙々とハルオが舌を巻くほどのプレイをするだけ。しかしそのプレイを見ているうちに、自分に無いものを全て持ち、更に自分の得意と思っていたゲームすら上をいく大野さんをライバルとして強く意識していたハルオも、彼女のストイックなまでの気持ちの良いプレイに惹かれ、次第にゲーム仲間として意識していくようになるのです。

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彼女とゲーセンで度々出会う中で、一見超然として無口な彼女の表情から意図が汲み取れるようになったり、怖いものが苦手で恐怖すると思わず手近にいるハルオを殴ってきたり、彼女の家の事情で自分の好きなことを目一杯やることができない彼女を察して同情にも似た親近感をもったり…こういうのってゲームの皮を被せているけど貧乏な一般の少年と深窓の令嬢が仲良しになる的超王道ストーリーじゃないですか。風邪を引いて学校を休んだハルオの家に、プリントを届けに大野さんがやってきたり、1プレイが激安10円と噂の遠くの街のゲーセンまで荷台に大野さんを乗せて自転車をこぐシチュエーションとか、もうとにかく甘酸っぱい展開満載なわけですよ。それでいて小学生同士だからこそとも言えるかもしれませんが、終盤までハルオから恋だのなんだののいやらしさが出てこないのもいいんですよね。あー鈍感!男子!けれどそこがいい!

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ラスト、二人はとある事情で別れ別れになってしまいます。
そこでようやくにハルオは大野さんへの気持ちに気づくわけですが、そこからの怒涛の展開もすごいですよ。
おススメです!


押切蓮介さんのウェブページ → カイキドロップ

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