幾百星霜 [恋愛]
いや その方がもりあがるでしょ
今も昔も乙女は恋に興味津々―
時は明治。
袴を穿いたお嬢様方が行き交う女学校に、対照的な仲良し二人組みがおりました。
のっぽだけど心優しいお嬢様・杉内敦子さん
おちびで美少女だけど口の悪い滝千賀子さん
ある日、幼少の頃より双方の親同士で決めていた杉内さんの縁談が、
彼女の“背丈”を理由に破談になったと聴いた滝さんは、その一方的なお達しに怒り、
姿も知らない許婚者を一目見てやろうということになった。
他人の恋路に口出ししたり、自分の恋には足踏みしたり…
恋に恋する乙女達が巻き起こす上を下への浪漫コメディ!
マンガ・エロティクス・エフにて連載。
著者の雁須磨子さんの作品は、私初めて拝見したのですが、
BL系や女性向、青年誌など様々分野で作品を描かれている方らしく、
「ファミリーレストラン」という作品は2006年に映画化もされているそうです。
この本、以前から気になっていたんですよね。
私は明治・大正の袴を穿いた女学生ものに目が無くて…(;´▽`A``
本人の意思とは関係なく決まる許婚者(いいなづけ)とか、
かつてはそれが絶対だった封建的な風潮に堂々と自由恋愛を主張して反発し、
相手男性との身分の違いをも乗り越えて自分の納得のいく恋を成就させる逞しい女性とか。
そういった私の大好物な普遍の恋愛シチュエーションが劇的に描かれるのに
この明治・大正ほど合う時代は無いと思います。
そして今回の作品は、まさに私好み。直球どストライクでした。
背は高いものの、おっとりしていかにも「お嬢様」という風情の杉内さん。
親友である彼女を一方的に袖にした相手の顔を一目みてやろうと、
癇癪もちの小犬のような滝さんが、杉内さんを伴って先方の屋敷に乗り込み、
そこで相手のお家の事情に関わっていく本作。
もうこの勝手に義憤に駆られて動き出す滝さんがいかにも
「じゃじゃ馬」とか「はいからさん」てかんじで好き。
そして一方の杉内さんは、恋愛小説が夜更かしするほど大好きで、
自分が最も傷ついているハズなのにロクに顔も知らない元・許婚者を
滝さんの悪口雑言から擁護するような発言をしたりして、彼女の母親もですが
ふんわりした空気を纏ったいかにもお人よしの箱入り娘なんです。
そして元・許婚者、そしてその家族といずれも考え方は異なって
ひと悶着は起こるものの、悪人が一切出てこないお話作りが凄くイイ。
完全に個人対個人の恋心ひとつで解決せず、それに双方の
お家の人たちが深く関わってくるこの時代の比較的裕福な家庭の恋愛物語は、
もうそれだけで大恋愛になるんです!
そして時代を感じさせるノスタルジックなものもふんだんに出てきます。
木造の校舎・時間になると先生が鳴らしてまわるハンドベル・路面電車
アイスクリン・西洋風のカフェ・野球・テニス・和装と洋装が入り混じる風景も
実にこの時代らしいし、かといえば武家の屋敷や貧しい人々の間では
今だ江戸時代のようなヘアスタイルと和装が当たり前だったり、
封建的な空気が支配していたりと、洋風化への過渡期に見られる
ある種混沌としていて、新しいものが次々と輸入されてくる
エネルギーに満ちた時代を感じさせて、それだけでワクワクしちゃうんですよね。
1巻から2巻の発売まで2年を要した本作。
順調に行けば3巻は2012年と少々気の長いお話ですが、
完結まで見守っていきたいお話です。はいからさん好きな方は是非!
雁須磨子さんのHP → ジョンにすまこの部屋
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