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自虐の詩 [ハートフル]


自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

自虐の詩 (上) (竹書房文庫ギャグ・ザ・ベスト)

  • 作者: 業田 良家
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 1996/06
  • メディア: 文庫


私は私が嫌いよ~!

最近萌えものの多い4コマに食傷気味で、
あまり読んでないのでもっと開拓したいなあと思っていたんですね。
そこで偶然似たようなフィーリングの方がTwitterでお薦めしていた4コマを読んでみることに。
つまり今回ご紹介するマンガなのですが…
いやあ、すいません。正直4コマなめてました!orz
2008年には実写映画化もされたというこの作品。
お話は とある貧相で薄倖な女・幸江の半生。
愛に飢え、暴力的なヒモ男に甲斐甲斐しく尽くすダメな女の壮大なドラマなのです…

週刊宝石にて'85年~'90年まで連載。
このマンガ、著者である業田さんが物語の方向性を転換したと思われる箇所が何箇所かありまして、最初は正直なんてことはない普通の4コママンガとしてスタートするんですよ。

鼻にほくろのある貧乏で貧相な幸薄い女・幸江。
彼女は内縁の夫であるイサオと、隣人の会話が筒抜けになるくらい壁の薄いボロいアパートに住んでいます。
しかしこのイサオという男がなんともヒドいヤツで、目付き鋭く腕っぷしの強い、パンチパーマのいかにもなコワモテ男なのですが、当たり前のように幸江を働かせ、家のことも炊事・洗濯はもとより爪切りすら自分でしない。ヒドい時には空の茶碗を手にしてわざわざトイレに入っていた幸江さんにご飯のおかわりを催促するくらいなんにもやらないズボラ加減。…いや、勢いに任せて「出て行け!」と幸江を家から追い出すと、自分の飯すら作れずしまいには幸江を駅まで呼び戻すというから「できない」とも言えるかもしれません。そこがちょっとだけ可愛く見えたりはするのですが…。(^_^;)
それはさておき、散々幸江をこき使うくせに自分は働こうとはせず、幸江の稼ぎをふんだくっては酒だ競馬だパチンコだにつぎ込んでスッテンテンになって帰ってくる。しまいには何か少しでも機嫌を損ねると毎回のようにちゃぶ台をひっくり返すDV男なのです。
当然お隣のおばさんを始め周囲の人々は事ある毎に「あんな男とは早く別れちまいなよ!」と幸江に勧めるのですが、幸江はそんなイサオの振る舞いに文句を言うどころか「テーブル返しても私をケガさせないように工夫してくれる心遣いがある」なんて思ってたりして ええっ!?それ長所!!? って突っ込むどころか呆気にとられるばかり。そして本人は意外と不幸だと思っていなかったりするのです。

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連載当初は毎回のように何かすごい理不尽な理由で不機嫌になったイサオが、卓を「でぇ~い」とひっくり返したり、幸江が隠していた家の生活費をあの手この手で巻き上げられ、家を飛び出すイサオの背中に「あんたぁ~!」と叫ぶオチが多く出てきます。そしてその合間合間に「ヒドい人。…でも好き♡」みたいな感じの、どんな理不尽な要求でも叶えてあげようとする幸江の姿が描かれるお話が挟まって、なんていうかもう…典型的なダメな男とダメな女みたいな、ちょっと笑えるんだけどなんともやるせない気分にさせられるお話が多いんですよ。
これにあれこれ恋のアプローチをするものの、イサオ一筋の幸江に袖にされ続ける幸江のパート先の定食屋のおやじや、お隣のおばさんもおばさんで、一見優しそうな紳士然とした町内会長さんに惚れた弱みでマルチ商法にハマって色々買わされるエピソードがあったりして、間抜けなやり取りで騙される女、とか、必死に引きとめようとするんだけど、やっぱり逃げられちゃう女、とか、散々酷い目に遭わされてもやっぱり男から離れられない女、みたいな感じのお話が多くて正直、上巻を読み終わった時の気分はあまり気持ちのよいものとは言えませんでした(^_^;)

しかし下巻の冒頭からこの雰囲気が一変します。
何かというと、上巻でもちょこちょこと挟まっていた幸江の幼少~中学生時代のエピソードが、メインのお話しになってくるのです。
幸薄い幸江の記憶…それは、働かずに借金ばかりを重ね妻に逃げられたダメな親父と、母の愛情も父親の父親らしい姿も何一つ得ること無く育った、愛に飢えた卑屈な少女時代の物語なのです。
ここに至って上巻では「なぜこれほどに…?」とドン引くくらいイサオに尽くし続ける女、という薄っぺらいキャラクターに見えた幸江が、なんとも深い…深くて昏い、過去のことを思い出すと今でも幸江が「あ”あ”あ”あ”…」と頭を抱えてしまう程の体験が綴られるのです。
下巻からイサオが可愛く見えてしまうくらい卑劣でコスくてどうしようもない幸江の親父がもう…
そして貧乏で愛に飢えた幸江はどんどん卑屈になり、自分に親切にしてくれるなら…と周囲の友だちが気味悪がるほど一生懸命期待に応えようとする。そんな卑しい自分を自覚してもいる彼女は、度々一人叫ぶのです
「私は私が嫌いよ~!」と…
そしてそんな少女が出会った生涯の親友・熊本さんの登場、後に幸江がどんな仕打ちを受けても決して離れないイサオとの出会い…と、下巻はこの幸江という人間の半生の濃さに圧倒されるばかりなのです。

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未読の方はとりあえず上下巻買っちゃいましょう。
そして上巻は我慢して読んでください、と申し上げておきます。
なにせ上巻の巻末に寄せた内田春菊さんの解説でも、下巻の内容にしか触れてないくらい下巻が素晴らしいのですから(^_^;)
私は観られてないのですが、NHKのBSマンガ夜話でも絶賛されたそうで、放映直後にはネット通販で売り切れになるほどのものだったそうです。
女房質に入れても読むべきマンガだと思いますよ!
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コメント 2

大林 森

私も読んでみようと思います。先輩方の才能とガンバリにはまだまだ及びませんです。(>_<)
by 大林 森 (2012-04-18 20:19) 

meriesan

ぜひぜひ!(^-^)ノ
by meriesan (2012-04-19 07:44) 

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