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国民クイズ [燃え]


国民クイズ (上巻) (Ohta comics)

国民クイズ (上巻) (Ohta comics)

  • 作者: 杉元 伶一
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2001/07
  • メディア: コミック


君の望みを聞かせてくれ!!

ドオン!!
静寂と闇に包まれたステージに、一条のスポットライトがあたる。
その光の中には派手派手しいスーツと蝶ネクタイの男が一人。
右手を高らかに掲げ、決して照明のせいだけではない熱狂を宿すギラギラした目を
テレビカメラに向けながら、宣誓するが如く朗々と声を響かせる―
「全国1億3千万人の個人主義の皆様!! お待たせしました!
日本政府が1年365日!日本全国津々浦々までリアルタイムでお送りする
史上最大!空前絶後!前代未聞で痛快無比!!
その他ありとあらゆる賞賛の4文字熟語の嵐を受けて 本日もここに―
『国民クイズ』の時間がやって参りました!!」
途端、ステージの照明が一斉に点灯し、カメラは響き渡るオーケストラの荘厳な音楽をBGMに
この日のために全国から集まった500人もの回答者たちが居並ぶ巨大な回答者席の全景を映し出す。
「国民クイズ」 それは、日本の議会制民主主義に取って代わり、
クイズに勝ち抜いた者の「欲望」を唯一絶対のものとして政策に反映させることができる
革新的なエンターテインメント型国家意思決定システム!
そして司会のK井K一は今宵も、欲にまみれギラギラしたスタジオの回答者たちを、
更には日本全国の視聴者たちを天国と地獄、興奮と熱狂の渦へと連れて行くのだ―!

モーニングにて連載。全2巻。
今回は1993年頃のバブルの余韻がのこる時代に連載されたクイズマンガをご紹介します。
クイズマンガと言えば、以前「ナナマルサンバツ」をご紹介していますが、
あちらがリアルなクイズモノであるのに対して、こちらはクイズの勝者には
それがいかに利己的なものであろうと、不道徳な望みであろうと
今やアメリカを抑えて世界の超大国となった日本国家が全力をあげてその望みを叶えるという、
人々の欲望を鋭く風刺したエンターテインメント作品になっています。

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金持ちになりたい、一戸建てが欲しい、飼い犬探しを依頼する人もいれば、
自分を辛い目にあわせたアイツへの復讐を望むものもいる。
欲、欲、欲。些細なものから巨大なものまで欲にまみれ、あれをよこせと声高に叫ぶ
500人の回答者たちがクイズに挑む様を日本全国に向けて365日休み無く
国が運営する「国民クイズ」がお茶の間に向けて生放送されている社会。
自分の会社のワインを売れるようにするため、外国産ワインを輸入禁止にしろ だの、
銃器の所持を合法にしろといったものまで出るので、国民クイズの行方は各国のお偉方も
常にその動向をチェックしています。勝てば夢が叶うけど、負ければ逆に不合格者の烙印を押されて
犯罪者さながらに強制労働や財産の没収などが行われる…それでも後先考えずにやってくる
強欲な人々にマイクを向け、面白おかしく盛り上げるのが かつて自らも国民クイズに出場して不合格となり
「司会」として刑期を送ることになった主人公・K井K一の役割となるのです。

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民主主義を放棄し、勝者の決定を全ての司法・立法・行政その他あらゆるものより
絶対のものとして優先することが決めらた国民クイズは、国民クイズ省という省庁内で
官僚組織が絶対的な権限をもってかつての国会議事堂だった建物内で運営され、
出演者だけではなく運営側にも様々な利権が絡んで正に日本の全ての欲望が集中する
番組となっています。K井K一はその番組のけん引役として、象徴として、道化として
ステージ上を飛び回り人々の欲望に火を点けまくっていくのです。
しかしそうしつつも彼はどこかこの政治システムと、それを自在に操って
日本を動かしていると驕る国民クイズ省の人々や、一方で不合格者として強制労働をさせられ
失意のまま息絶えた人の家族、勝者の欲望を叶えるため理不尽に人生を無茶苦茶にされた人々の
怨嗟の声、そして国民クイズの象徴である自分に「復讐」しようとする組織に身の危険を感じたりしながら、
かつて自分が売れない芸人時代に離婚した妻と暮らしている娘が自分に会いにきたことを契機に
彼は遂に一つの決心をするに至ります。

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欲にまみれた人々の嬌声、それを裏で操っている官僚たちの驕り、
国民クイズに不満を持つ人々を扇動し、強国日本を追い落とそうとする他の国々の思惑、
ありとあらゆる「欲」が集中する国民クイズの中枢で、K井K一は翻弄されながらも
持ち前の演技力とハッタリで「革命」を成し遂げていきます。
そのダイナミックさが実に面白おかしく、今まで通りの道化を演じながらも
彼の存在が日本を、世界を変える大きなうねりを引き起こしていく。

大仰に同意しているように見えてその実皮肉に満ちた、
道化を演じる彼のセリフのひとつひとつが実に面白い。
まとまりのない文章になってしまいましたが、実に面白い作品でしたよ。

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