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ライチ☆光クラブ [スリル/サスペンス]


ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

ライチ☆光クラブ (f×COMICS)

  • 作者: 古屋 兎丸
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: コミック


「まさか僕たちにもあんな醜いものが詰まってるのかな?」
「まさか 僕たちのはもっと美しいに決まってるじゃないか」


ピーーー
  ピーーーー
       ピーーーーー
人気の無い真夜中の廃工場に響き渡る笛の音。
その音に追い立てられるように、巨大で無機質な鉄の工場群の合間から人影が走り出た。
闇を切り裂く幾筋もの鋭いスポットライトが人影を照らし出し、
遂に男は数人の学生帽と詰襟の学生服姿の少年達に捕らえられた!
暗転―

場所はどこかの廃工場内。
捕らえられた男は、頭に袋を被せられ、両手・両足を縛られてまるで芋虫のように
ぐるりを取り囲む少年達の前に転がされていた。
よく見ると転がされている男も、囲んでいる少年達と同じ詰襟の制服を着ている。
彼らは、互いに同じ中学生だった。
しかし取り囲む少年達が目の前に転がる同校の生徒に向けている瞳は、
一様に虫けらを見るかのように冷酷で、それでいて夢見るような狂気の光を宿していた。
彼らは熱を帯びた口調で唱和する。
「捕らえました!ゼラ」
「この男は我々の聖なる地を見てしまいました!ゼラ」
「そう この秘密基地を!!」
「そして この男は見てしまいました!ゼラ」
「そうです! あれを見てしまいました!ゼラ」
『ゼラ!この男に裁きを!!』
刹那、一条のスポットライトが彼らの背後、玉座に座る角眼鏡の少年を浮かび上がらせる。
「お前2組の常川じゃねぇか てめえオレにこんなことしてただですむと思ってんのかよ!?」
捕らえられた少年は頭の袋を剥がされると、玉座に座る見知った顔を見つけて精一杯の虚勢を張った。
常川と言われたその美しい少年は、静かに、そして詠うように口を開いた。
「常川― それはある共同体においてそう規定されている。
   しかしここ光クラブにおいて 我は『ゼラ』と規定される」
そして 捕らえられた少年は、ほどなくして彼ら「光クラブ」の少年達による「制裁」を受けることになった…

エロティクスf にて連載。
今回はTwitter でもそのお名前をちらほらお聞きする
古屋兎丸さんの漫画を拝見してみましたのでご紹介します。
古屋さんは「多彩な画風と、繊細で正確な書き込み、ブラックな作風が特徴」(Wikipediaより)
な作家さんだそうで、耽美な表紙を描くかと思いきや、別の作品では
青年誌のような愛らしい女性の表紙だったりして、その一端が垣間見えます。
私が古屋兎丸さんの漫画を拝見しようと思ったのは、この丸尾末広さんのような
耽美で大正浪漫的な雰囲気をもった、学生帽に詰襟の少年達の表紙にぐっときて、
Twitterでもお薦めされたからでした。

原作は古屋さんが多感な頃に観た、1985年~86年の「東京グランギニョル」の舞台公演の劇で、
丸尾末広さんも宣伝美術を担当していたこの劇に衝撃を受けたのだそうです。
大いに刺激されて自身も演劇を始め、しかし憧れの東京グランギニョルに
入団する自信がついた頃には解散をしていました。
この作品は、その古屋さんが憧れて、遂に忘れることができなかった「ライチ光クラブ」を
一部のアレンジを加えてコミック化したものなのだそうです。
だからこそなのでしょうか、絵柄が当時広告をのイラストを描いていた丸尾末広さんの絵に
良く似ていて、これだけで私はぐっと引き寄せられたのでした。(;´▽`A``

子供時代には、少年であれ少女であれ、大人どもを完全に締め出した
自分たちだけの世界を創り出しそこにすみ続けることを夢見る。
自分の部屋を「城」として閉じこもることもあれば、二、三人の親友と共に
秘密の場所を見つけ出して、そこを冒険の基地にすることもある。(あとがきより)

大人を「醜悪なもの」としてとらえ、偶然この基地の存在を知ってしまった学校の先生を
散々罵倒した上、最後は身体を切り裂き、内臓を引きずり出してむごたらしく殺害した彼ら。
男子校に通う9人の中学の少年達は、とある廃工場の地下で、
毎夜ゼラと呼ばれるカリスマ的指導者を絶対者とした「光クラブ」で秘密のロボットを創っています。
起動したロボット「ライチ」に少年達は「美しい少女」を連れてくるように命じ、
ライチは美少女・カノンを彼らの秘密基地に連れてくることに成功する。
清く美しいものとして、カノンを祀り上げる一同。しかし、カノンのあまりの美しさに
劣情を抑えきれなかった一人のメンバーが、ゼラの命令を破ってしまったことから、
疑心暗鬼に囚われるゼラと、絶対の信頼を置いていたゼラの思い込みによる「処刑」に
動揺する姿。そしてそこで巻き起こる愛憎の物語が描かれます。

img653.jpg
もうね、思春期をとっくに卒業した私からすれば異常と思えるような
独特の世界が描かれていて良いんですよね。
大人を俗っぽいものとして毛嫌いし、ロボットのライチにさらわせた美少女を
「永遠の美の象徴」として崇め奉っちゃったり、ゼラに心酔しきっていて
彼の命令一下、どんな残酷なことも行うメンバー達の、この中二病加減がなんとも。(;´▽`A``
とはいえメンバー達に一人ひとり特徴的な性格があり、ゼラに誰よりも目をかけて欲しいと
どんな残酷な命令でもこなす少年や、逆にゼラのやり方に疑問をもって徐々に反逆する者、
その諍いをどこかから眺めてほくそ笑む者…
ラストの血みどろどろどろの決着はとにかくものすごい。(;´▽`A``
そしてゼラの言いなりになっていたロボットのライチと、彼に人間の心を教える
美少女・カノンのエピソードも、狂気の集団となっていく光クラブの面々に対する
救いとして印象的です。
耽美なんだけど、血みどろどろどろ。
そんなルナティックな作品に抵抗が無いようであれば、読んでみて欲しい作品です。


古屋兎丸さんのblog → ウサギ☆ひとりクラブ
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