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ラブロマ [恋愛]


ラブロマ(1) (アフタヌーンKC)

ラブロマ(1) (アフタヌーンKC)

  • 作者: とよ田 みのる
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/09/19
  • メディア: コミック


いけるトコまで綺麗事でいきましょう

「根岸さん 好きです 俺と付き合ってください」
昼休みの教室―
思い思いに昼食をとっていた生徒たちは、突然の告白劇に水を打ったように静まり返った。
何より驚いていたのは根岸さんであったろう。
なにしろ彼女はその男子の顔見知りですらないのだ。
「星野です」
微動だにせずその男子は名乗る。
「昨晩根岸さんに告白しようって思って考えたんです
 それで…『本当のコト話せば大丈夫』…って思ったんですよ」
ニコッ
いやニコッ、てされても。
結局根岸さんは星野君の熱意に押し切られる形で、まずは一緒に下校することになった。
その場に居合わせたクラスメートからは思わず拍手の嵐だ。
これはバカが付くほど正直者の星野君と、ハッキリものを言う男らしい根岸さんの
宇宙一正直な純愛ラブコメディ―

月刊アフタヌーンで連載。全5巻。
最近「友達100人できるかな」が完結して話題になった、とよ田みのるさんの初単行本作品です。
こちらでは「FLIP-FLAP」を以前ご紹介しています。
例によってTwitter上のマンガ好きの方の間で好評だったので読んでみました。

まずこの作品は「強烈に男性的なラブコメ」だなあという感想を持ちました。
言い方は悪いですが「欠陥品のラブコメ」ともいえるかもしれません。
それはラブコメのキモである「誤解・すれ違い」という
ハラハラドキドキの展開がほとんど発生しないからです。
じゃあ何がこのマンガの面白さのキモであるかというと、互いの気持ちを
隠すことなくさらけ出して議論する、大抵のラブコメでは最後の最後に出てくる
その明け透けなやり取りなのです。

この物語の一方の主人公、星野君はとにかく正直者。
恥ずかしげも無く人前で告白し、やや理屈ぽい迂遠な言い回しを使うこともあるけれど、
キスがしたい、弁当を作ってほしい、デートがしたい、SEXがしたい、そして―
「あなたのことをもっと知りたい」
とにかくそんな自然と湧き起こる相手への欲求を、駆け引きナシでドストレートに
ハッキリキッパリ伝えてくるのです。しかしそれは一方的に自分の欲求を押し付けてくる
オレ様キャラと言うわけではなく、あくまでも根岸さんが納得したうえで紳士的に行おうとし、
あまりのストレートさに思わず突っぱねてしまう根岸さんの戸惑いをきちんと受け止めた上で
お互いの想いをすり合わせていくのです。
対する根岸さんも星野君が
「不満があれば言ってくれるし 怒れば殴って 哀しければ泣いて わかりやすく関係がもてます」
と彼女を好きになった理由として挙げるくらいハッキリとモノをいう性格。
なので二人の意見が食い違うことは山のようにあるけれど、その度にどちらかが
ヘンに妥協すること無しに、徹底的に互いの気持ちを理解しようとする。
そんな恋愛の一つの理想型が、主に何でもあけすけに言っちゃう星野君に、
ツッこむ根岸さんという漫才のような軽快な会話劇という形で繰り広げられるのです。

img081.jpg

星野君みたいのが普通の女の子とつき合えるかと言うと…うーん(;´▽`A``
3巻の帯にグラビアアイドルの方がコメントを寄せていますが、
やっぱり「友達として付き合いたい(;´▽`A``」とのこと。ですよねー
誰だってなかなか他人に自分の心の底にある欲求をストレートに言うなんて怖くて出来ません。
ましてや雰囲気創りとか一切なしに藪から棒に「キスをしませんか」と言ってくる相手には
大抵の女性はドン引きするだろうし、適当にごまかしてフェードアウトしてしまうでしょう。
だからこの二人の物語はどこまでいってもファンタジーなのですが、
もしもそんな二人が存在したら、という駆け引き下手の男子にとっては(モチロン私にとっても)
正に理想型の恋愛物語として二人のやり取りがほほえましく読めるんですよね。

そして他のマンガにはなかなか無い美点として挙げられるのが、
互いの思いをすり合わせた結果によって互いが共有する深い相互理解。
なんだかんだ、顔を合わせれば毎度のように細かいことで意見の食い違いを見せ
果ては「二人が今まで喧嘩したことがあるかどうか」の議論で喧嘩になってしまうという
友人達も呆れる犬も食わない理由で度々論議に発展してしまう二人。
しかし、大抵その論議の火付け役となる星野君は粘り強く理解してもらおうと努め、
根岸さんも自分を尊重してくれていると感じられるからこそ、最後には納得して受け容れる。
このプロセスを他のラブコメでは雰囲気や駆け引きといったもので
「きっとこう思ってるんだな」と自己の中でなんとなく納得していくものを、
非常に理屈っぽく互いが納得した理由を明示していき、曖昧な部分は
「ここは曖昧なままでいこうね」と整理して共有していく過程が本当に解りやすくて気持ち良いんです。
二人の間のやりとりだけではなく、二人に関わるサブキャラクターたちが持ち込む
綺麗事だけではすまないテーマを、それでも「いけるトコまで綺麗事でいきましょう」と言い切り、
喧嘩したことも、仲直りしたことも、寂しかったことも楽しかったことも、
積み上げられていった100万言のやり取り全部が「私たちの持ち物」として
互いに共有されていくのです。

img082.jpg

お話は星野君が根岸さんに告白した1年生のできごとから、卒業間際まで描かれます。
それまで毎回のように出てくる様々なサブキャラたちも魅力的で、
特に私は星野君に片思いする杉山さんが好きですね。
自分の恋は叶わないけど、かといっていつも自分に好きだと言ってくれる幼馴染には
全くそういう感情が抱けない彼女。片思いだけどくせ者揃いのこの作品にあっては
唯一まともな恋をしていて安心するというか…(;´▽`A``

ここまでの長文をご覧いただきありがとうございました。
改めて言うまでも無いと思いますが、おすすめですよ(;´▽`A``


とよ田みのるさんのHP → FUNUKE LABEL
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コメント 2

マロン

ラブロマ、いい漫画ですよね。ちょっとだけ古い作品であることや独特の絵風が原因なのか、コアなマンガ読み以外の知名度がかなり低いように感じます。もっともっと広まってほしい良い作品です^^
by マロン (2011-05-03 11:41) 

meriesan

確かに。味と言えば味な絵なんですけどね~。
私も口コミがなければなかなか手は出さなかったと思います。一人でも多くの方が読んでくれるといいのですが。ヽ(‘ ∇‘ )ノ
by meriesan (2011-05-04 04:24) 

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