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満ちても欠けても [ハートフル]


満ちても欠けても(1) (KCデラックス)

満ちても欠けても(1) (KCデラックス)

  • 作者: 水谷 フーカ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/13
  • メディア: コミック


ラジオってね リスナーに向かって話すとき「みなさん」とは言わないの
「あなた」って言うのよ


ビールを開けるプシューって音。
ジューってお肉が焼ける音。
ただ見るよりも、聞いている人の中で膨らんでいく「音の世界」。
午後11時、AM1431、ラジオ雛菊 "MNM(ミッドナイトムーン)"。
ここには音だけのメディア、ラジオを愛する人たちがいる。
満月の夜も、新月の夜も、あなたに届けたいメッセージ。
想いを込めて、ささやきます。
(1巻カバー より)

ラジオの、特に深夜放送には特別な魅力があるんですよ。
なんていうかラジオパーソナリティとの非常に近い距離感。
自分に語りかけてくれているような近さ。
それは基本生放送であることが強く影響していて、放送する側と聴取者(リスナー)とが同じ時間を共有している感じや、その日に届いたハガキやメールが読まれ、原稿を読むのではないナマのその人の反応が聴ける。そして周囲が静まり返った深夜に、それを聴くことでまるで番組の人たちが自分の隣で話をしているような親しい感覚、それがテレビに無いラジオの魅力だと思うのです…。

Kissで連載中の水谷フーカさんの「満ちても欠けても」は深夜ラジオに携わる人々を描いた物語です。
毎週月曜~金曜日の午後11時、AM1431KHzのラジオ雛菊でオンエアされている番組「MNM(ミッドナイトムーン)」。
1巻には6本のお話が収録されていて、それぞれMNMのラジオパーソナリティ、同じ番組に携わるミキサー、局内のカフェの店長、新人アナウンサー、放送作家、番組ディレクターとラジオ局に関わる様々な立場の人が入れ替わり主役となって、全体でラジオの魅力を描き出していきます。
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TVと比べれば予算の規模からいっても映像が観られないという点から言っても圧倒的に劣るラジオ。
けれどだからこそ手作り感にあふれているし、映像が見えないからこそ聴こえてくる音声に想像力を刺激されて親近感を感じることができる。そんなラジオならではの魅力が作中のあちこちに描かれているんですよね。
例えば1話の主人公であるMNMの番組パーソナリティ天羽日向(あもうひなた)の場合、話の中で「深夜の小腹が空いたときにささっと作れる夜食を作ってみよう」というコーナーの新設を提案するくだりがあるのですが、このリスナーと同じ目線のコーナー企画が生まれる点なんかはそうですね。3話で出てくる「お悩み相談」なんかはラジオ番組では定番のコーナーで、自分の非常に個人的な悩みを番組に送るリスナーがいて、それに対してパーソナリティだけではなく同じリスナーからリアルタイムにアドバイスが送り返されてくることで成り立つ。そこから生まれる常連の「ハガキ職人」なんて言葉も、今では殆ど生番組を行わないテレビでは聞かれなくなった、ラジオ独特の言葉です。
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一方で好きだからこそ、楽しみながらもストイックさも併せ持つラジオ雛菊に携わるスタッフたちの職業ものとしてのドラマ性もあります。
生でやっている失敗できない緊張感と、その場の流れでいきなり台本を書き換えてしまうドライブ感。
「そっちのがもっと面白そう」となれば、急な変更でもスタッフ達がやってやろうじゃない!とノリノリでやってしまう連帯感。1番組がパーソナリティを含めて5,6人で構成されていることもあってチームものとしての面白さ、人間関係のドラマも詰まっていてラジオやポッドキャストが好きな私にとっては非常に楽しめる一冊でしたよ。
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1話おためし → 講談社コミックプラス
水谷フーカさんのwebサイト → 猫街
作品作りに深く関わったニッポン放送アナウンサーよっぴーさんのつぶやき → togetter
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