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月夜のお曜 [ハートフル]


月夜のお曜 (SPコミックス)

月夜のお曜 (SPコミックス)

  • 作者: 中島 守男
  • 出版社/メーカー: リイド社
  • 発売日: 2010/11/05
  • メディア: コミック


たまにゃ側に来ねぇかい? こんな月の晩くれぇはよ…

長屋の熊吉爺さんが死んだ。突然の事だった。
何かと口うるさくはあったが、身寄りの無い自分を可愛がってくれ、
親とも思っていた隣部屋に住む火消しの秀は、だから葬儀の翌晩には
新たな住人が入ってくると聞いて眉をひそめた。
全く整理されていない爺さんの家財道具もそのまま使用するというほど
あまりにも突然のことに、秀が大家に食ってかかっていると
熊吉の部屋の戸がすぅっと開いて、中から見慣れぬ女性が姿を現した…
「皆さんの気持ちも考えずに…すみません でも…今さら他に行くあてもございません」
それはその場に居た一同が一瞬にして静まるほどの目も覚めるような美人だった。
憂いを帯びた顔(かんばせ)、きちっとした身なりながらも、その艶然として肉感的な、
それでいて瑞々しい体つきが着物越しにも伝わってくる様子に、一同は息を呑む。
「なーに 気にすることないよ熊吉さんだって美人(べっぴん)さんに入ってもらえて
きっと喜んでると思うよ…」
途端に鼻の下が長くなる一同。
しかし、秀はどうしても新たな隣人となったお曜を素直に受け入れられずにいた…

コミック乱にて連載。全1巻。
著者は最近までアフタヌーン誌上で男ばかりの一家に後妻としてやってきた肉感的な嫁が、
家族からの様々なセクハラを受けながらも奮闘する姿を描いたホームコメディ「吉田家のちすじ」を
描いている方です。
「大人の萌えマンガ」とされていた「吉田家~」は、個人的にあまり興味が持てず見送ったのですが、
今回は表紙のお曜さんのむちっとした肉付きの良いお尻に加え、江戸の長屋ものという舞台が
個人的に大好きなジャンルだったこともあり、読んで見ることにしました。

帯には『うなじ・行水・襦袢・壁穴etc...ムッチムチの大人の艶気が江戸を席巻!!』とあり、
まさしく「吉田家の血すじ」ぽいエロコメっぽい雰囲気を感じるアオリ文が載っています。
勿論部屋を隔てる壁に開いたのぞき穴からお曜さんの行水姿を覗き見られちゃったりとかの
シーンもあるのですが、中身はむしろ、私が好物とするところの長屋人情ものでした。
ほっとすると共に古典落語でお馴染みの「熊さんはっつぁん」とか「向う三軒両隣」とか
「大家と言えば親も同然、店子(住民)と言えば子も同然」的な世界が展開されていて
もう食らいついて読んでしまいました(;´▽`A``

お話としては、急死してしまった熊吉爺さんの部屋に、突然やってきた謎の女性・お曜さんと、
彼女にお近づきになろうと互いに足を引っ張り合ったり、かといえばあまりにも不可解なことが多い
お曜さんの謎について、男やもめの長屋の住人達が協力し合ったりする
マドンナを巡ってドタバタする男達の滑稽さが面白おかしく描かれています。

狭くて薄い長屋では、一つ噂が立てばあっという間に長屋中に広がります。
長屋ものの魅力は、その連帯感というか阿吽の呼吸と言うか…
誰かがお曜さんと部屋で話をすれば、その玄関口には他の住人である大の男達が
雁首そろえてその様子を覗き込んでるシーンがあちこちで描かれ、困っているとなれば
「ここは俺に任せろ!」とばかりにお曜さんにいいとこ見せようとしゃしゃり出る。
それだけでなく一朝なにかあれば、熊吉爺さんの葬儀も、引っ越してくる店子の手伝いにも、
痴話げんかの仲裁にだって現れます。
他人の気配がしたら眠れない、というくらい疎遠となった現代ではなかなかお目にかかれない、
まるで兄弟か親戚かくらいの他人の近さが、時に煩わしくもあるけれど良い雰囲気なんですよ。

img578.jpg
謎めいた美女・お曜さんと何とかして恋仲になろうと奔走する男達、
そして同様に惹かれながらも、自分が親とも慕った熊吉爺さんと彼女の謎の関係が
わだかまりとなり、女々しいことは大嫌いなサッパリした江戸っ子気質も手伝って
思わずツンケンした態度を取ってしまう秀。
やがてお曜さんの意外な身の上を知り、熊吉爺さんとの関係を知るに至り、
秀のわだかまりも氷解していく展開が実にイイ。
ラストシーンは古典落語の人情ものとしては定番で、だからこそ
「うわあ~いいなあ!」と思える素敵なファンタジーでした。

お話だけでなく、江戸の下町の街並みや、町民の文化、武家屋敷の佇まいなど、
さすが時代劇雑誌に連載されていた作品だけあると、何気ない町の背景も
実に細やかに描かれた本作。
江戸人情ものに興味がおありでしたらお薦めですよ!


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