プリンシパル

プリンシパル 1 (マーガレットコミックス)

• 作者: いくえみ 綾
• 出版社/メーカー: 集英社
• 発売日: 2011/05/25
• メディア: コミック

ふたりの歴史に　親子の歴史に　ともだちの歴史に
あたしはどこかの一端にでも―
一端にでも―　……いられれば…

最初の一言はすごく　くだらないことだったはず―
A美に言った些細な一言から　あれよ　あれよという間に険悪になって…
いつの間にか私はハブられていた。
それでなんとなく東京の学校にいづらくなって、母の3人目の継父とも折り合いがつかず、
私は実父のいる札幌に逃げ出してきたのだ。
そこで私は和央と弦に出会った。
密かにファンの多い二人に近づくと、どうやらハブられてしまうらしいけれど…
恋に落ちてしまったらしかたありません。

Cookieにて連載。
今回は「清く柔く」など多くの少女漫画を描き、もっさりしてるけどその言動は
女性読者のツボを押しまくる「いくえみ男子」という言葉もあるらしい
人気の女性作家・いくえみ綾さんのマンガをご紹介します。
昨年「清く柔く」が完結し、その盛り上がりは男性のマンガ読みの割合が多い
私のTwitterのタイムラインでもちらほらお見かけし、面白い！というので気になってたんですよね。
いくえみさんの作品は初見なのでその特徴がまだまだ捉えきれた気は全くしないのですが(;´▽｀A``
ご紹介していきますね。



主人公は東京の女学校で些細な一言から周囲の友達にハブられ、
既に離婚した両親の母方から北海道の父方の家に引っ越した女子高生・糸真（しま）。
彼女は女子特有のコミュニティの空気に時折鈍い時があり、
その不用意な言動でグループからハブられてしまった苦い経験をもっている。
実父のもとで新たな生活を始めた糸真は、そこで母子家庭で身体の弱い和央（わお）と、
彼に甲斐甲斐しく世話を焼く和央の親友、弦に出会います。
偶然ご近所だった和央の家の犬がきっかけで、クラスメートでもある二人と知り合った糸真はしかし、
二人が同じクラスの女子たちの間で人気が高く、特に和央は「みんなの和央」「抜け駆け禁止」な
ある意味アンタッチャブルな存在である事を知る。
以前の苦い経験からクラスの「和」を乱したくないと思う反面、和央を好きになってしまった糸真。
さあ　その恋の行方は…？　というような筋になっています。



女性向けマンガの特徴とも言える「ハブられ女子」の糸真と「みんなのアイドル」和央。
特にヒロインが学生だったりする「君に届け」の爽子と風早君など、この要素は実に多く出てきます。
大抵の場合はなんだかんだで最後には周囲に認められ、二人は晴れて恋仲にという
エンディングを迎えるわけですが、このお話もそのパターンかと見せかけて、
更に事情がフクザツになって行くから面白い。
それは幼い頃から和央の世話を焼き続けてきた弦の和央への執着であり、
糸真の父の、意外な人への恋慕であり、「抜け駆け」して二人に近づく女子に「制裁」を与えていた
とある女の子の思いであり、弦が言った「和央は誰も好きにならない」という謎めいたセリフであったり…
もうとにかくこのクラスメートたちの間に実に様々な恋愛感情だか友情だかが絡まりあっていて
そこへ後からやってきた糸真が、そのフクザツに張り巡らされた人間関係の糸にうっかり絡まって
他の人との不協和音を引き起こしてしまう…
これがなんとも一筋縄ではいかない、ドキハラだったり、意外な展開だったりになるのです。

そして糸真たちキャラクターたちの、家族や友人同士の日常の何気ない会話が
丁寧に描かれているのも面白みの一つですね。まだ初対面に近いほぼ赤の他人状態の
和央と弦との会話での「～じゃん」をつけたテンポの良い会話だったり、
物思いにふけっていた糸真にじいっと見つめられた父が、勘違いした発言をしたりとか、
するっと小ネタでクスりとさせてくれて、キャラクターに生活感があるというか。



何より周囲の空気を読んで身を引くよりも、思わず自分の感情を優先する行動を取ってしまったり、
それで招いた窮地で和央に思わず八つ当たりしてしまったり、
それがために不安や自己嫌悪に陥って眠れぬ夜を過ごしたり、
本音がぽろぽろ出てしまう糸真がとてもリアルで面白い。
ベテラン作家の貫禄を感じる厚みのある物語だと思いますよ。


1話おためし（専用ブラウザのダウンロードが必要です） → Cookie公式