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四季賞2010冬 ~月刊アフタヌーン付録 [ファンタジー]


月刊 アフタヌーン 2011年 04月号 [雑誌]

月刊 アフタヌーン 2011年 04月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/02/25
  • メディア: 雑誌


今回もこの時期がやってきました。
本日は月刊アフタヌーンという雑誌で定期的に募集している
投稿マンガの賞・アフタヌーン四季賞に選ばれた作品をご紹介します。
前回は主に少年少女たちのピュアな青春ドラマ的なカラーの作品が多く集まっていましたが、
今期はぐっとそれより年齢層が上めの大人のキャラクター達が多い気がします。
こうもがらっと変わるものなんだなあと少々戸惑いはありましたが、
それでも今回も獲得した賞にふさわしい作品ばかりですよ。

四季大賞 「二人の記録」 みやあやた
第二次大戦下のナチスによるユダヤ人の強制収容施設。
そこへ一年中花が咲き誇るようなファンシーな世界から、魔法少年がやってくる。
彼は一日二回杖から放つことができる「怒りを除き、優しくなれる魔法」を使って
施設で日々過酷な環境で働かされ、弱ればあっさりと銃殺されるユダヤ人たちを
助けようと銃殺しようとする将校に魔法をかけるのだが、なかなかうまくいかない。

一方で彼は唯一自分を見ることが出来るユダヤ人の少年・クルトと出会う。
彼は目端の利くメガネの少年・イザクと組んで、撃ち殺された同胞の死体から金品を漁り、
将校達に供出して見返りにパンや紙、鉛筆などのお目こぼし品を受け取っていた。
あえて卑しい仕事を進んで引き受ける二人は実は、暴力や殺人を犯した者と
された者の名前を紙に書付け、そうしていつかここを出たあとで
その記録を晒してやるのだという目的を持っていた。
「目的があれば死ににくくなる」
そう言って不敵に笑うイザク。
そんな彼に引っ張られるように、行動を共にするクルト。
この二人の運命が、実になんというか…考えさせられます。

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どんなに周到に事を運んでも、将校たちの気まぐれひとつで命が消し飛ぶ究極の環境下で
薄氷を踏むがごとく足を踏み出し続ける二人。
分が悪いどころか最初から絶望的な中で希望を持ち続けることの難しさ。
魔法の国の少年は、自分の魔法が思うように効かず次々とユダヤ人たちが殺されていく中で
それでも思いつく限りの手段をもってクルトを支えようと努力します。
果たして二人の目的は無事達成されたのか?
…それは是非実際に読んで確認してみてください (;´▽`A``

も、とにかく選民思想に骨の髄まで浸かりきったドイツ人将校が、
そして死んだ目で淡々と目の前の仕事をこなしていくユダヤ人達が、
本当凄く雰囲気出ていて、絶望的な気持ちにさせてくれるんですよ…



四季賞 「異国息子」 星すばる
とある街外れの丘の上に建つ家で、フミは目覚めた―
「これは罪滅ぼしみてえなもんかもしれねえな」
そう言って一人ごちる博士は、かつて大量虐殺兵器を発明し、
それを国が利用したことによってアレクサンドライトの国の人々を全滅に追い込んだ過去を持つ。
そのアレクサンドライトの人に似せた形のアンドロイドを博士が造り、
一人娘の幼いルリと共に彼の成長を見守ったのは、正にそういった衝動からだったのだろう。
そんな博士もアレクサンドライトの生き残りの二人組みに殺され、
それから9年ののち…

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活発で可憐な少女に育ったルリとの日々を通して、フミの心の成長を描く物語。
このお話の重要なキーパーツとなる「手」の表情が非常に細やかで、
フミ自身は無表情なんだけどその想いが強く伝わってきます。
良くあるテーマなんだけど、それをキーパーツに託して表現する巧みさ。
絵自体も綺麗ですけど、ブレのないメッセージ性をもった作品だと思います。



かわぐちかいじ特別賞 「オアシス論」 「日陰の氷」 山下竜一
かわぐちかいじ氏による特別賞は、山下竜一さんの2作品に決まりました。
片やプライドだけは高い、保健室の常連・中二男子のチョットだけ前進した心の成長物語。
片や男に認知されずに堕胎することを決めた女性が、そのためのお金を得るために
遺体解剖のバイトを選んだ先で出会う、「死体と話す」といわれるほどの変わり者・池家との物語。

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前者は周囲から見ればいじめられっこなんだけど、それを認めようとせず
あえておどけた口調でへーきだとアピールする、コメディタッチの中に
ほほえましいオチのあるもので、
後者は「独りでも大丈夫」と孤独に自分を奮い立たせることに懸命なヒロインが、
池家という理解者を得て変わっていくしっとり爽やかなものと
別の人が描いたのかと思うほどにテーマもノリも異なる(絵は似通ってはいるけど)
山下さんの引き出しの多さを感じさせる2作でした。

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もう少し絵が観やすければ、と かわぐちかいじさんも仰ってますが、
このするっと流れていくようなラインが魅力でもあり、時に解りづらくもあり…
難しいところですね。(;´▽`A``

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コメント 2

お名前

いつもブログ拝見してます。
四季賞は読み応えありますよね‼別冊子になっているのも嬉しいですし。
さて、質問です。四季賞はその名の通り、春夏秋冬と4回必ず受賞者が出る賞なのですが、こちらのブログ様では、「冬」しか扱わないのでしょうか??
もしよろしければ、春夏秋のご感想も見てみたいです!
by お名前 (2011-03-09 07:58) 

meriesan

あ。
言われてみれば確かにそうですね(;´▽`A``
単純に普段雑誌を買わない私がたまたま偶然見かけたのが冬版だったということで、ご指摘いただくまで冬以外の四季賞があることを知らずにおりました。
我ながらなんともマヌケな話です。
教えていただきありがとうございました~ヽ(‘ ∇‘ )ノ
by meriesan (2011-03-10 02:06) 

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