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四季賞2011秋 ~月刊アフタヌーン付録  [青春/自分探し]


月刊 アフタヌーン 2012年 01月号 [雑誌]

月刊 アフタヌーン 2012年 01月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/11/25
  • メディア: 雑誌


2011年も残すところあと1ヶ月少々となりました。
ちらほらと年末恒例の今年のマンガベストランキングのタイトルの話題が聞こえてくるようになった中、こちらも恒例の月刊アフタヌーン「四季賞」が発表されました。
今回は「四季大賞」「四季賞」と選者の「萩尾望都特別賞」を加えた3作品が受賞しています。
絵の巧拙の差はあれど、今回はどのお話も引き込む力があったと思います。
次はどうなる、次はどうなる?!とページをめくらせる力が。
それではご紹介してまいりましょう!


四季大賞 「やまもとでんき」 武内香菜
とある田舎の商店街。
町の電器屋の息子としてごく平凡に育ってきた受験生・省吾は、東京の大学に合格して口うるさい親父のいるシミッタレた家から一刻も早く飛び出したいと思っていた。大学に入ったらテキトーに遊んでテキトーに勉強して、そして普通の会社に入って…とにかく電器屋を継ぐなんて真っ平ゴメンだ!そんなことをぼんやりと思っていた。
ある日の予備校からの帰り道。商工会の寄り合いだと言っていた父を、省吾は町の路地裏で見かける。
見知らぬ男と二人、見慣れない作業服姿で大きなポリバケツを運び出している父。
あまりの意外さに思わず角から盗み見てしまう省吾の前で、はずみで横倒しになったポリバケツから飛び出したもの…それはいつまでも続くと思っていた、省吾の平凡な日常を揺るがすには十分な衝撃を持つ「もの」だった…。

どこにでもいるごく普通の口うるさい父、ごく普通の人の良い母…普通だと思っていた両親には実は尋常ではない秘密があった…!
どこにでもあるような家庭に生まれた普通の息子・省吾が、非日常の世界に巻き込まれていくスリリングな展開。これが一気に物語に惹きこみます。
え?これ何かの夢…?
しかしそれは紛れもない現実で、日常はゆっくりと崩壊を始める。
いつもと同じような口調の両親が、まるで得体の知れない存在になる恐怖。省吾が思い切って路地裏で見かけたことを告白した時の、父親の能面のような表情がゾクリときます。
絵柄はのっぺりとして普通の青春物を描きそうなのに、でもだからこそその非日常さが引き立つというか…
母親や親戚の人々の白々しいほどいつもと変わらない態度が余計に緊張感を生み、否応無く運命に翻弄されまくる省吾。全ての事が済んだ後の、彼の最後の選択がじぃんとクるんですよね。
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四季賞 「ライツ カメラ アクション」 栗本竜磨
技術も無い、根性も無い、そのくせキャリアだけは無駄に長い落ちこぼれのスタントマン、それがオレ。
子供の頃はヒーローに憧れ、いつかは自分も大変身して…と願った記憶は遥か遠く、密かに憧れているずっと年下の人気アイドル・れいちゃんの前で、カントクやれいちゃんと同じくらい年下の青年に頭を下げさせられる日々。
そう。オレはヒーローなんかじゃなかった。それどころか底辺の人間だった。
どん臭く、根性も無く、失敗ばかりで…なんで人並みにできないんだろう…
オレはあのヒーロー役の青年のように、れいちゃんの傍らに立つ資格なんか無い。
今はただせめて、れいちゃんが幸せでいてくれればそれで…
けれどある時オレは見てしまった!
それは稲妻のように全身を打ち据え、ボコボコにし、完膚無きまで叩きのめす。
それからオレの中で、何かがハジけた…!

間もなく30を迎えようとしている落ちこぼれスタントマン・野呂。
何度もチャンスを貰って、しかしことごとく失敗して自分に半ば失望している彼が少しだけ前向きになる話。
こういうのなあ…自虐的なんだけど好きなんだなあ。
昔夢見たヒーローになるどころか、現実は全く異なる石ころのような自分。
輝くようなヒーロー役の青年・村田に嫉妬したり、高校卒業したての新人アイドルなのに、常に堂々として端役である野呂にも優しいれいちゃんに無理とは承知しつつも想いを寄せたり、町を歩けばどこかの誰かのリア充ぶりに自分が情けないような叫びだしたい気持ちに襲われながら、うだうだうじうじしている姿はまあ何というか…「解る」とは言いたくないけど正直身に詰まされる。
ダメな自分はやっぱりダメで、どんどんどんどん失敗して、そして最後の最後のトドメを喰らった後、彼が「キレ」たところからの展開が面白い。
「明日になれば突然何かのきっかけで超人的なパワーが身につくはずだ」って思ってた。
けれどそんなことは絶対になくて、けれど俯いていた自分が顔をあげれば、世の中はその様相を変える。
少しだけ、本当に少しだけ成長したラストシーンが印象的でした。
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萩尾望都特別賞 「絶交」 岩見樹代子
優等生で委員長、将来を期待された「優等生」晴香。
彼女は優等生だから分け隔てなく面倒見も良い。…それが例え、クラス中でいじめられている鮫島ゆかりに対してでも。
ある日の体育の授業中、バレーボールを当てられて鼻から出血したゆかりを保健室に連れて行った晴香は、彼女の持ち物の中にある本を見つける。
それは「完全拷問マニュアル」
ページのあちこちに付箋が貼られ、明らかに読み込まれたその本を必死に取り返そうとするゆかり。
弾みで突き飛ばされた晴香は、かっとなって思わずその本を取り上げてしまう。
「この本で誰に仕返ししようとしてたの…?」
いじめられっ子の意外な持ち物、そして決して標的の名前を言おうとしないゆかりに、晴香は戦慄しながらも思わず白状するまで本に書かれている拷問をゆかりに施すと宣言する―

ぱっと見たとき「あ、絵柄が平尾アウリさんに似てるなあ」と思いました。
そして何となく物語はじっとりした陰湿かつちょい淫靡なカンジで…この背徳感が実に良い。
担当編集さんのコメントにもありましたが、いじめられっ子のゆかりの純粋そうな瞳に思わず怯み、その瞳を曇らせてやろうと思わず周囲のクラスメートたちと同じ嗜虐心に憑かれてしまう展開。そしてどんどんどんどんエスカレートして緊張を高めていくスピード感も巧い。
ラストで明かされるゆかりが拷問したい相手というのがまた…決して理解できない心情ではあるのだけど、凄いなあと。
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