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四季賞2012春 ~月刊アフタヌーン付録 [青春/自分探し]


月刊 アフタヌーン 2012年 07月号 [雑誌]

月刊 アフタヌーン 2012年 07月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/05/25
  • メディア: 雑誌


3ヶ月に一度のお楽しみ。今回もアフタヌーン四季賞が発表されました。
今回は何といっても以前別の賞を受賞した方が、今回は見事大賞を受賞したのが印象的でした。
この表紙の絵柄、以前の四季賞を読んだ方ならピンと来る方も多いのじゃないですかね。
今回の受賞作はその四季大賞に加えて四季賞・審査員特別賞の各1作ずつ。点数的には最低限にはなっていますが、今回は実に作品ジャンルのバラエティに富んでいると思います。
それでは早速ご紹介してまいりましょう!

四季大賞 「千代のくちびる」 岩見樹代子
今回の四季大賞は、2011年秋の四季賞で審査員賞を受賞した岩見さんの新作が選ばれました。
前回受賞した「絶交」では、とある事がきっかけで普段は優等生を演じている女の子がいじめられっこの女の子に次々と嗜虐的な責めを加えるという、背徳的かつ淫靡な雰囲気で強く印象に残る作品を発表されていた岩見さん。
今回のお話は少女の頃の幻想が剥がされ、うずくような痛みを感じさせる物語。

小学5年生のちよは担任の先生にほのかな恋心を抱く女の子。
けれどいかにも子供っぽい容姿な上に、ニキビやアトピーの肌荒れだらけの自分になんてとても先生が振り向いてくれるはずがない‥ ちよはクラスメートの美人で大人びていて、それでいて可愛い椎名さんの魅力の足元にも及ばない自分に、毎日鏡を覗いてはため息をつく日々。
そんな ちよがある日、忘れ物を取りに一人放課後の学校に戻ると、誰もいないはずの教室で椎名さんと先生とがキスをしている場面に遭遇してしまう。
ものすごい衝撃とともに無性に恥ずかしくなって、ちよは目的も忘れてその場から逃げ出した。
けれどその様子を見ていた椎名さんに追いつかれてしまう ちよ。
「見たんでしょ」
椎名さんの詰問に哀れなほど真っ赤になって狼狽える ちよ。
その素直過ぎる反応を眺めているうち、椎名さんはふと ちよにこんなことを提案する‥
「いま私とキスすれば 先生と間接キスできるんじゃない?」

早熟な女の子が、うぶな女の子にちょっとイケないお遊戯を教える的な。
うぶな女の子はそのくらくらするような未知の刺激にふらふらと引きよせられて‥みたいな。
前作は暴力的で叩きつけるようなお話でしたが、今回はより秘密めいたような、それでいて小学生の女の子同士らしく ちよはもとより時折見せる椎名さんの戸惑う姿も初々しいような、そんな姿が印象的です。
椎名さん自身が提案したのだけれど、あれから ちよが「好きな先生の代理」として自分の唇を度々求めてくるその一途な様子に、段々と変わっていく心の動き。更に「キスをさせる代わりに」と キスする度にちよのニキビをひとつ潰す椎名さん‥このゾクゾクするような背徳感‥Sっ気あるなあ(^_^;)
そしてラストを読んだ時、ふと昔弟に「サンタはホントはいないんだぜ。ほら、あそこに親が用意したクリスマスプレゼントが隠してあるだろ?」なーんて得意げにくっちゃべってたのを思い出しちゃったりしました。

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お話もそうなのだけれど、なんたって画が凄いんですよ。
審査員の先生も担当編集の方も仰ってますがプロレベル。
それは一枚絵的な「可愛い女の子が描ける」というのではなくて、コマに配置する身体のパーツの見せ方のことを言ってるのですが、戸惑う少女ちよと、微かに嗜虐的な匂いを漂わせつつ ちよを誘惑する椎名さんの二人のやり取りを、顔の表情そのものを描くより二人の身体の部分部分にクローズアップして見せることで、読む側の妄想をかきたてるような描き方をするんです。
コマの緩急のつけ方も良くて、このねっとりさ加減は凄い。
もちろんこういう描き方は全く新しいというわけではありません。むしろ女性向けマンガでは「男の人のごつい手」や「喉仏」にクローズアップすることでセックスアピールするなんてのは一般的です。けれどここまで押し切るのはやっぱり凄いと思うんです。岩見さんは化粧品会社にお勤めだそうなので、やはり身体のパーツパーツに対する観察は並々ならぬものがあるんだろうなと。


四季賞 宇宙のハルモニア 須藤由華
目前に迫った音楽コンクール。けれど肝心の指揮者は今だ決まらず‥
吹奏楽部3年のチカはこの時、部の命運を一身に背負っていたと言っても過言ではなかった。
クラスメートの相模―
自身を天才と称してはばからない唯我独尊の彼は、指揮を振ってもホルンを吹かせても確かに申し分の無い実力の持ち主だった。
‥けれどそれ故に音大の受験勉強を優先し、高校のコンクールを軽んじる態度は腹に据えかねるし、更に彼は参加する条件として、自分との交際を持ちかけてきているのだった。
迫る日程、どう逆立ちしても代わりになる逸材のアテもなく‥チカはまるで自身を王子様を待つ悲劇のヒロインに見立てながら、休み時間の教室でとうとう腹を決めて切り出した。
「え‥えっち以外なら何でも言うこと聞くから‥ 指揮振ってください お願いしますっ!!」
一瞬しん と静まり返る教室。
恐る恐る目をあけて相手の反応を伺うチカ。
「脇にいた」相模は、あまりのことに愕然とチカを凝視していた。
‥ ま‥間違えたーーッ!!
チカがお願いした相手は、あろうことか相模の隣に座るもっさい男子・加賀美君だった。
勉強こそ音楽を含めて相模を超える全科目一位の超天才。けれど彼は、ぶっきらぼうを絵に描いたような孤高の天才だった。
‥もしかしてこれは瓢箪から駒?
勘違いからではあるものの、チカはこの少し自分の妄想する王子様に似た雰囲気を持つつっけんどんな男子に思い切って賭けてみることにするのだった―。

うって変わってこちらは高校の吹奏楽部を舞台にした青春ラブコメ。
「自分にできないことはない」と堂々と主張する孤高の天才・加賀美君と、チカが加賀美に執着するのを、嫉妬も多分にあって同じく吹奏楽部に参加する事になる相模君。そして二人をうまーくドライブするチカちゃんという、爽やか青春コメディなのです。
いやあ、言ってしまえば話の展開は素晴らしき黄金率を持ったオヤクソクをもって進むのですが、ラブコメのコメディ的なやり取り、男と男のプライドを賭けた意地の張り合いが二人を、そして吹奏楽部全体を高めていく‥この展開が本当に上手く描かれてるんですよね~
嫉妬心から加賀美くんに何かと対抗意識を燃やす相模君と、それを気にしてないという風な態度を取りつつも意識してしまう加賀美君。そして相模君の嫉妬を煽るかのように空気の読めない加賀美君にあれこれと世話を焼くチカ。チカなんて「喧嘩をやめて~二人を止めて~♪」的ないけ好かないキャラに陥るかと思わせきや、ちょいと少女ちっくな妄想&突撃ガールというキャラクターもあって、それほど嫌味のない性格なのもいいんですよね。
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うえやまとち特別賞 夜に彩雲 佑来那津
仕事の傍ら小説を書いて時々お金をもらう生活をしている充。
けれど最近は自分の中で欲のようなものが出てきているのを感じてもいて、少し煮詰まり気味‥
そんなある日、彼の住むマンションの隣に越してきたのは、高校生の頃父親の死をきっかけに引っ越していったかつての幼なじみの姉妹だった。
再開したはじめこそ、妹のよそよそしさに戸惑ったものの、すぐに打ち解ける妹。けれどどことなく年齢に見合わない幼さに、姉は引っ越してから充に再開するまでの空白の9年間をぽつりぽつりと打ち明けた―

ラストは19歳にしてどっしりとした家族のドラマを描いた佑来那津さんの作品をご紹介。
年齢の割に子供っぽい言動が目立つ妹。そして母親との別居‥
姉の口から語られたのは、父が亡くなってから度々ヒステリーを起こすようになった母親と、その犠牲になった妹・彩子の物語。
充の一人称でお話は進み、彼は若くして母親から苦しみを味わってきた姉妹の体験に圧倒されながらも、二人を包み込むような優しさで受け入れていきます。
ラストあたりに姉妹が入れ替わりながら一人ずつ正直な気持ちを充に告白していくシーンとかは作者の年齢に見合わないほど巧い。全体的に姉妹との会話と充のモノローグだけで展開していくのですけど、会話の自然な感じとかも凄いなあと思います。彩子の「幼さ」の示し方もあからさまじゃなくて「あれ?」と違和感を感じさせる程度に留める自然さ。充がちょいとまとめめいた、ともすれば道徳的とも取れる含蓄のあるセリフを吐くと彩子が茶化したりするバランスとか、その茶化し方のくすぐったさとかいいなあ~
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ヘムヘム

四季賞の各作品の内容が
よくわかりました、感謝!
by ヘムヘム (2012-08-05 00:34) 

meriesan

感想ありがとうございます!
面白みが少しでも伝われば幸いです~(∩´∀`)∩
by meriesan (2012-08-10 00:30) 

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