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しずかの山 [スリル/サスペンス]


しずかの山(1) (イブニングKC)

しずかの山(1) (イブニングKC)

  • 作者: 松本 剛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/03/23
  • メディア: コミック


高遠さーーーーん

上から下へ真っ直ぐに引かれた一本の縦線。
その先にあるのは、不自然に身体を投げ出す人の姿…
その線の名は “命綱”―
蜘蛛の糸のようにか細い線は、視界遥かどこまでも続く絶壁から滑落した彼が、
白い闇に呑み込まれるのを辛うじて支えているのだ。
「健二ッ 健二ーーーーーっ!!」
ありったけ絞り出した自分の声は、
一瞬前まで最期の登攀に挑んでいた彼をピクリとも動かすことなく、
どこまでも続く闇の底に虚しく吸い込まれていった。
「ううっ うううー…!」
それは自分と彼の二人分の荷重を支えながらロープを握る両の腕のあげる悲鳴か
それとも心の底から自分を慕っていた、彼の最期を受け容れられない心の悲鳴か―
いずれにせよ すぐに限界はくる。“決断”をせざるをえなかった。
滑落する間で何度も身体を打ちつけた。
彼の片足は引き千切れ、もう片足はあらぬ方向に捻じ曲がっている。
即死だ。
「ゆるしてくれっ…!」
何度も念じながらポケットから
折り畳みナイフを取り出す。
そして震える手で
彼の命綱を
切断した。


イブニングにて連載。
画布のような質感のカバーに描かれた、ざらりとした貌。
今回ご紹介するのは、山を舞台にした漫画です。
山漫画といえば、最近は「岳」が話題になって久しく、
当然のように私も大好きな作品です。
「岳」の舞台がハイキングから登山客まで、様々な人を受け容れる開かれた山なら、
こちらはエベレスト、アンナプルナなど8000m級の山々が相手の
運が少しでも傾けば即、死に繋がる人を寄せ付けない閉じられた山が舞台です。

ネパール 標高3440mの村―
物言わぬ少女と共に暮らす名前の通り物静かな日本人・高遠静は、
現地で山のガイドを営んで暮らしていた。
物語は優秀なアルピニストでもある彼が、様々な事情で死と隣り合わせの山登りを依頼され、
そこでドロドロとした人間ドラマが展開されるものです。
「山は巨大な密室である。そこで起きる生と死のドラマ。
 それは何が起きていても不思議ではない。」
と語る原作者の愛英史さん。
言葉の通り静が参加する一行は、そこで死のギリギリまで追い詰められていき、
遂にはそれまで隠していた本性をあらわにしていくのです。

圧巻は度々出てくる山の巨大さと、その山の中でゴマ粒のように描かれる静たち一行の図です。
画面いっぱいに描かれた岩肌に、へばりつく人間たち。
眩暈がするほどの構図です。
「岳」でも時折描かれることはあるけれど、あちらは人情話がメインで
山は飽くまで「背景」として見えるのに対して、こちらの山は明確に一行を殺しにかかってる
と言ってよいくらい「意志」を感じる描き方をしています。

img788.jpg

一つのエピソードが何話かに分かれて描かれる本作。
今現在発売されている2巻までのお話では、まだ3つ目のエピソードが始まったところで
終わっていますが、烈しい突風に、突然の雪崩れに、するっと手を滑らせた瞬間巻き起こる滑落と、
毎回デストラップが目白押しで緊張感が途切れません。
いやあ 凄いですよ…!


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