空色パンデミック

空色パンデミック(1) (ファミ通クリアコミックス)

• 作者: 連
• 出版社/メーカー: エンターブレイン
• 発売日: 2011/06/15
• メディア: コミック

「見つけたわよ!!　ピエロ･ザ･リッパー
　ジャスティスの仇はここでとらせて貰うわ!!」
それは高校受験にむかう、とある冬のホームで…
「は…はい!?」
僕は見知らぬ少女に朝から因縁をつけられていた。
ピエロ･ザ･リッパー？ジャスティス？…
突然向けられた少女の敵意に、思わずしどろもどろになる僕。
彼女は足早に僕の目の前まで迫るや僕の襟首に手を伸ばし…
「！！」
僕の唇を奪った…。
“空想病”―
それは発作を起こすと自らの妄想の物語の主人公になる病。
これは彼女こと穂高結衣と、彼女の空想世界に巻き込まれ、
唇と平穏な日常とを奪われた彼こと仲西景の終演のための物語―

ファミ通コミッククリアにて連載。
今回はライトノベル原作のコミカライズ作品をご紹介します。
時折自分が妄想の主人公となって、周囲がその物語のキャストに見えてしまう病。
そんな“空想病”と呼ばれ、場合によっては周囲の人々にもそれを感染させて
自分の妄想の世界の住人として操ってしまうこともあるという…
言わば中二病を国が認めるほどのシャレにならない“病”として設定した作品。
すごいなあこの発想！(;´▽｀A``
イタかった自分の思い出として、大抵は後に自分の死ぬほど恥ずかしい黒歴史と化す妄想が、
世界中の人を巻き込んで“幻の第三次世界大戦前夜”なる非常事態を引き起こしたことから
以降空想病患者は国に徹底的にその素行を管理される世界…
妄想を解くためには患者の妄想にあえてノり、患者が満足する結末を迎えられるよう
演じてみせる必要があるというこの世界観！
病であるとはいえ、国公認で妄想に付き合ってくれる人々が配置されるという
この構図が面白いんですよ。



お話としては高校の受験日に突然、初めて出会った空想病の少女・穂高結衣
の妄想に巻き込まれることで始まる、ボーイミーツガールもの。
偶然同じ高校の面接会場で出会った女装好きで妹が空想病を患っている青井君や、
結衣の姉であり、政府の空想病対策の研究機関で代表を勤める穂高真由らも現われ、
あの入試の日の一件以来、黒服の男達を引き連れながら何かと景に会いに来る結衣との日常と、
“空想病”の患者、家族、そしてそれに巻き込まれる周囲の人々を描いていきます。
自分が自分で制御できず、周りを巻き込んでしまう病を患う少女…
いかにもなセカイ系ぽいストーリーに、中二病的な妄想をブレンドして
自分は神の洗礼を受けし教会の使途、
手にしたバットは聖剣「無限罪の十字架（イノセントブレイド）」、
敵は仲間のジャスティスを殺した仇敵「ピエロ･ザ･リッパー（＝景）」という
はたから見ればごっこ遊びを大真面目にやっているような構図になるんですね。
いやあ…“病”という免罪符を掲げることで周囲の大人たちが真面目に自分の妄想に
付き合ってくれるなんて、お子様が舞い上がっちゃうようなお話ですね。
…ていうか羨ｍ（ｒｙ



とはいえお話の流れとしては、やはりこの病のために今も昔も普通の女の子とは違う
孤独な人生を送る結衣を始めとして、空想病に関わる真由や青井君の苦しみをも
描いていくようです。
私は例によって原作未読ですが、読んだ方のレビューを拝見する限り、
原作は綺麗に終わっているそうなので、この漫画も期待ができそうです。
お名前が短すぎてコミカライズを担当した連さんがどういった方なのか
プロフィールを見つけることはできませんでしたが、絵の雰囲気も好み。

ただひとつ不満があったのは、
原作付きでお話が決まっている連載漫画をどこで区切るかというところ。
中二病的ルビがバンバンふられるインパクトのある結衣登場シーンから、
その後は発作を起こすことなくひたすら正気の結衣や、空想病に関わる人々の
エピソードに終始していて、できればもう1回くらい最後に空想病を発病したところで
ドキドキさせて〆て欲しかったなあと。その手前あたりのこれから何か起きそうな
予感あたりで終わっちゃってるのが引きとして弱い感じがして残念でした。
コミッククリアのページで1巻収録の6話以降となる8話までを読めるのですが、
7話の半分くらいまで入れて欲しかったかなあ。


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