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食の軍師 [コメディ]


食の軍師 (ニチブンコミックス)

食の軍師 (ニチブンコミックス)

  • 作者: 泉 昌之
  • 出版社/メーカー: 日本文芸社
  • 発売日: 2011/01/08
  • メディア: コミック


こやつ…デキル!!

食とは戦略なり 諸葛亮孔明、見参!
著者の泉昌之という名義は、原作・原案担当の久住昌之さんと
作画担当の泉晴紀さんになるユニット名なのだそうです。
久住さんと言えば、谷口ジローさんとの共著となる「孤独のグルメ」や、
うさく…もとい水沢悦子さんが作画を担当した「花のズボラ飯」等でもその食べ物へのこだわり、
とりわけ普段私達が食べているような身近な料理を題材に語りまくるという
作品を多く出されています。
そして1981年にガロから共にデビューした泉晴紀さんとの本来のユニット「泉昌之」名義での
この作品こそ、本当にこまっっっかく食事の段取りに凝りまくった久住さんのこだわりが、
泉晴紀さんの劇画調の絵で三国志世界とくっつけて表現される物語になっているのです。
それでは食の五丈原へ皆さんをお連れ致しましょう!

食漫にて連載。全1巻。
食漫は食事を題材にした漫画雑誌だったそうなのですが、今は廃刊されています。
そんな雑誌あったんですね(;´▽`A``

トレンチコートを着たハードボイルドな男・本郷。
ハンフリーボガートをモデルにした泉昌之の作品では名物男らしいこのキャラクターが、
おでん、とんかつ、寿司、焼肉などあちこちの食べ物屋で食事をするというシチュエーションなのですが、
彼はその食べ方について一家言も二家言ももっているめんどくさいヤツなのです。
それこそメニューの組み合わせや注文のタイミング、食べ方の順番、何をつけて食べるか、
なぜそうするのか、果てはその店に行くまでのコンディション作りに至るまで
その段取りをとにかく緻密に組み立てているのです。
そんなこだわり派の本郷が自分の作戦に一人悦に入っていると、そこには偶然にも必ず
パーカー姿の謎の男・力石が現われます。本郷は本能的に彼の食べ方に筋の通った理を感じて、
(初期は一方的に)どちらがより上の食通かを三国志物語に出て来る合戦になぞらえて脳内で激しく
比べて勝った負けたと一喜一憂することになるのです(;´▽`A``

いかにスマートにカッコよく食べるか、いかにこだわりをもって食べるかについて
本郷はとにかくこだわります。
一話目のおでん屋台での力石とのバトル(と言っても飽くまで本郷が一方的に
ライバル視してるだけですが)では、力石が屋台の主人に放った「今晩は オヤジさん」という第一声と、
最初に注文したワンカップの酒の飲み方のカッコよさにいかにも「常連」といった風情を感じて
意識しはじめ、それは続けて力石が注文した「大根とこんにゃくとごぼう天」という組み合わせを聞いた所で
完全にライバル視をするに至るのです!

img352.jpg

めんどくさいやつですね(;´▽`A``
相手の注文を味だけではなくその形からも完成された「陣形」になぞらえ、
そちらがそうくるならこっちは…!と対抗して別のおでんダネで自陣を展開します。
この相手の何気ない注文の裏に潜む意図を(勝手に)読み取り、
それに対抗して自分の注文や食べ方がいかに奇抜で、
しかもウマい組み合わせなのかについて比較し、勝った負けたと言っているのです。
面白いのは決して正面きって力石に「勝負だ!」と宣言してこれを行うわけではなく、
飽くまでも本郷の脳内で行っている独り相撲だ、という点ですね。
自分の完璧な注文に対して「さてあちらさんは…(チラッ)」と見たら
自分を超える奇抜な陣構えを見て勝手にショックを受けたりして、
なんかもうこの人と一緒に食事したらめちゃくちゃ疲れそうです(;´▽`A``

やがてとあるきっかけで力石の方も行く先々で出会う本郷を意識するようになり、
ついにこれまた偶然出会った焼き肉屋で、同じ鉄板を囲むという直接対決になだれ込んでいきます。
いかに相手よりも食通ぽく振舞うか…ここまで極端ではなくとも、廻らない寿司屋での注文の順番だの
牛丼屋での「つゆダク」だの、漫然と注文している人たちの知らないこだわりの食べ方をしていますよ、
という優越感は食事に限らずとも何にでもありますよね。
プラモで素組み(説明書どおりに組み立てるだけの状態)に満足している人を見ると、
思わず「スミ入れ(ちょっとした色付け)だけでも!」とガンダムマーカーを手渡したくなったり、
超メジャーマンガの話題で盛り上がっている人たちを少し離れたところからマイナー誌を握り締めて
密かにほくそ笑んだり …え? えー 私はそんな人じゃないですよ。

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単行本にはその他にも「醤油の魔術師」という、
ヤマサの発売したこだわり醤油の販促で描かれたらしい、醤油に並々ならぬこだわりを持つ男が
いかに醤油が素晴らしい調味料かを吼えまくるマンガや、シブヤの近くにある
祐天寺の町興しプロジェクトで描かれた「祐天寺喰い」では、本郷が祐天寺の
ユニークな店を紹介する読みきりのマンガが収録されていて、こちらも本編の合間の漬物感覚で
キュッとくどくなったクチの中をリセットしてくれるシブい脇役です。

三国志を少しでもかじったことがあれば面白おかしく読めると思いますよ。
どちらかといえば本郷は死せる孔明に走らされる生ける仲達の方だとは思うのですけどね。


久住昌之さんのHP → とりあえずのQusumi’sHomePage
泉晴晴紀さんのblog → 和泉晴紀の過去日記
1話数ページ試し読み → Amazon「なか見!検索」
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