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長歌行 [燃え]


長歌行 1 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)

長歌行 1 (ヤングジャンプコミックス・ウルトラ)

  • 作者: 夏達
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/01/19
  • メディア: コミック


私 李長歌の道とは 仇敵・叔父李世民を地獄へ落とすこと
この命ある限り ただ一筋に!!


六二六年―
唐の李世民は玄武門の変において兄・李建成などを謀殺し二代目皇帝・太宗となった。
政敵であった建成方の一族郎党は太宗による苛烈な追捕の手によって根絶やしにされ、こうして天下は新たな支配者の下、貞観の治世を迎えようとしていた…
しかしここに太宗の追跡を辛くも逃れ得た唯一の生き残りが存在した。
建成の娘・永寧姫…またの名を李長歌 彼女は一人、昏き復讐を胸に誓って都を後にする―

ウルトラジャンプにて連載。
本日ご紹介するのは私の大好きな中国歴史物語でございますよ~
著者は夏達さんという方で、中華人民共和国の女性の方だそうで。
単純にだからというわけでもないのでしょうが、このマンガは非常に雰囲気が良いんですよ!
骨子となるお話は、歴史系の物語ではそれほど珍しい内容では無いと思うのですが、そして所々違和感を感じる箇所も無いではないのですが、しかしそれを補って余りある魅力を感じることができたのです。

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お話はいわゆる復讐劇です。
皇帝の長男であった父が後継争いに負け、争っていた父はもとより母も殺され、父の忠実な部下であった優秀な腹心は憎き李成民に重用され、身分はもとより供の一人も失ってただ一人、辛くも生き残った李長歌。
世の大勢が長歌にとっては叔父にあたる二代目皇帝・李成民のもとで落ち着きを取り戻そうとしている頃、彼女は自分から全てを奪った李成民に復讐を誓って都・長安から落ち延びることになります。
主人公の李長歌は幼い頃から李世民やその臣下たちからも可愛がられて育ち、捕縛術などの武術を習ったり、兵法などにも興味を示して文武に秀でているという女性。彼女自身の身体能力が高いこともありますが、彼女の追跡にあたった部下が事実上見逃したことで彼女は死んだものとして処理されることになります。
そこから彼女は密かに身分を変え性を偽り、その智謀をもって軍師として、辺境の朔州を治める刺史・公孫恒に身を寄せることになるのです。

見所をざっくりと「雰囲気」なんて言葉で括っちゃいましたけど、ひとつひとつ要素を挙げるなら、まず「画」がすごくいいんですよね。トーンを使ってないわけではないのですが、それ以上にペンの密度が実に細かい。なんて言うのかな…無理やり例えるなら西炯子さんのような黒の映える硬質で繊細なラインというか…それでいて歴史モノなので序盤で描かれる唐の都・長安の街並み、水墨画に描かれるような遠くの山々、そして細かい彫刻が施された明り取りや甲冑などの小物・衣装がいちいち古代中国らしさを感じさせてくれるんですよ。
らしさと言えば目上の人のことを指す尊称である「大人(ターレン)」とか、時折邪魔にならない程度にコマの欄外に注釈が入るセリフとか、高校の頃陳舜臣とか田中芳樹とか吉川英治とか伴野朗とかの中国時代小説にハマっていた私にはこの細かい描き込みが非常にうれしい。
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そしてセリフに言及しましたが、雰囲気がいいなあと思ったもうひとつの要素は、含みを持たせた虚虚実実の会話の応酬…!
例えば李長歌が死んではいないことを確信しながらも、表向き死んだこととして処理しようとする李世民の重臣・房玄齢と、そんな彼の嘘ではないけど微妙な報告に薄々感づきつつもまわりくど~く詰めの甘さを追求する二人のやり取りであるとか、李長歌の師であり李世民に召抱えられた魏徴が、房玄齢に会ったときのまるで昔話をしながら碁を打っているだけののんびりしたやり取りであるとか。こう…腹に一物隠し持ち、それを探り合うような国の中枢を担う政治家らし~いやり取りがたまりません。
なんていうか、ストレートでわっかりやすいキャラクターがほとんどいない、このねち~っとした感じが「らしい」んですよね~ あーこれだこれだ!ってかんじw
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逆に画作りの中でちょっと残念だったのは、擬音のいくつかにもう少し工夫が欲しかったかな…とか思いました。建物が燃える迫力のシーンで「ボー」とか「メラメラ」ってのはなあ…うーん。緊張感を持続させたいシーンで鳥が羽ばたく擬音に「パタパター」ってのもイマイチ雰囲気にそぐわないというか…(ブツブツ

しかしそれはとりあえず置いておけるくらい絵も、やり取りのねちっこさも楽しめる作品だと思いますよ。
歴史ファンタジー好きな方なら読んでみても悪くないんじゃないでしょうか。


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