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魔女 [ファンタジー]


魔女 1 (IKKI COMICS)

魔女 1 (IKKI COMICS)

  • 作者: 五十嵐 大介
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2004/04/30
  • メディア: コミック


あなた達の世界は“有限” わたし達の世界は“無限”
あなた達の言葉は、ありとあらゆる可能性を特定の性質に切り分けるナイフ
自分達の都合のいいように世界を刻む道具
わたし達は世界をあるがままに見る
わたし達は言葉を知りながらそれを棄てることができる者


「全身をすましたとき、目や腕や内臓全部。『想い』や『心』がうけとめるの。世界のうたう『うた』を…」
魔女―
それは世界をあるがまま、全身を通して『視る』者たち。
目で視、口で視、鼻で視、耳で視、手で視る。
言葉でよろい、機械で見る者が削ぎ落としてしまった存在を『視る』者たち。
彼女たちの瞳に魔女が宿るとき、世界は、その本来の姿をさらけ出す―

月刊IKKIにて連載。
「魔女」を主人公にした読みきりの連作短編集で、2集まで出ています。
2004年に文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。
フランス語版が2007年アングレーム国際漫画祭ベストコミックブック賞にノミネートされた作品で、
マンガ読みの方の間でも、五十嵐大介さんの代表作と挙げる方が多かったので、
今回読んでみることにしました。

携帯を持たず、以前は各地を放浪して山奥で3年間
自給自足の生活もされていたという五十嵐大介さん。
こちらでは以前、その頃の生活の一部を綴った「カボチャの冒険」をご紹介した、
写実的で繊細な自然描写が特徴的な作家さんです。
「魔女」と言えば、不思議な力で無から有を生み出す「魔法使い」「魔女っ娘」的なものを
想起しがちですが、五十嵐さんの描く魔女は、都会の文明的な場所を嫌い、
自然と溶け込み、精霊達の声を聴きながら自給自足の生活をする
「シャーマン」的なものとして描かれます。

毎回魔女も舞台も異なり、
あるときはトルコを舞台に、神からの使命を帯びて旅をしてきた遊牧民の娘と、
かつてこの地で手に入らなかった青年への復讐をするため
魔女となって舞い戻ってきた西洋人の娘の話―
あるときは とある熱帯の森の奥深くで、恋人を森を開発するために乗り込んできた人々に殺され、
身を捧げて強大な精霊の力で森を守ろうとする呪術師の話。
あるときは北欧の人里離れた雪深い小屋で弟子と共に生活する魔女と、
宇宙からやってきたとある石の話―
そして あるときは、がらんどうの日常から抜け出し、フェリーでとある女性と出会って
魔女として目覚めていく話―
その他にも描き下ろしの8ページほどのショートショートも収められていて、
いずれも言葉と文明に護られ、本来視えていた、感じられていた物が視えなくなってしまった私達に、
それらを視ることのできる魔女たちが訴えるような、諭すような、そんなお話になっています。

img765.jpg

自然礼賛、自然万歳!というものともちょっと違うかな?
それは本やビデオなどの一元的なものの見方で知った気になるのではなくて、
言葉にできないような五感で感じることで、もっと色々なものが視えるようになっていく。
そんなことを提示しているように見えます。
…うーん わかりづらいですね(;´▽`A``
例えば物語中に「土を掘る」描写があったとして、それを実際に自分で掘った時
土の匂いやお日様の匂い、少し湿った土の肌触りや土の中に虫が居たりとか、
そんな本や字面では感じられない、実際のものに触れることで圧倒的な量の情報が得られることを、
このマンガでは不可思議な生命であるとか、虫や木々の「自然」という形をとって
ドラマチックで幻想的な物語の形をとって伝えてくれたのかなと。

img766.jpg

これは画を視て感じてほしいと思います。
そんな感覚的なものを、窮屈なマンガという媒体に押し込めようとしているこのマンガは、
やはり言葉にはしづらいものです。


五十嵐大介さんの担当編集さんによる五十嵐さん情報blog → 五十嵐大介周辺日誌
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