GAME OVER [恋愛]
ねぇ こっち見てよ
初めて逢ったその日から…いいえ、出逢うよりも以前から、私はあの子に敵わなかったのだ―
朝の通勤のバスで、私は見知らぬ男性の隣に座る。
私を二度見させたら勝ち―
それは退屈な日々に飽きた私が考えた、簡単なゲームだった。
始めてみると意外に面白く、隣に座ると途端に私を意識しだす
見知らぬ男性の反応を見るのが、私のささやかな愉しみとなった。
「…?」
そんなある日、私はその男性客の、いつもの人たちと異なる反応に戸惑っていた。
それは私が目ぼしい男性はあらかた攻略し尽し、偶然目に付いた中学生の少年だった。
思春期真っ只中の男子中学生なんてイチコロ…
そう思って少し物足りなさを感じつつも、座ったつもりが…
(なぜこっちを見ないの? 隣にこんな美人が来たら気になるはず…)
私の思考は混乱した。
…思えば初めて逢ったその日から…いいえ、出逢うよりも以前から、私はあの子に敵わなかったのだ。
ポーカーフェイスの、これほどまでに年の離れた少年に…
楽園web増刊などで連載。
以前「この靴しりませんか?」のレビューをアップした際、改めてTwitterでお薦めを頂きましたので、
今年を締めくくるに後悔は遺したくないとw 拝見してみました。
本作は未発表作を含む3つの短編と、表題作の連作「GAME OVER」。
そしてそれに描き下ろしの最終話をくっつけた作品集になっています。
短編もそれぞれに良いのですが、やはり1番はこれ、ということで、
このレビューでは表題作の「GAME OVER」に絞ってご紹介します。
まずなんといってもこの「表紙」に触れないわけにはいきません。
ウェディングドレスとタキシードの年の差カップルが、お姫様だっこをしている絵。
もうこれだけで幸せ。(;´▽`A``
「この靴しりませんか?」の時もそうでしたが、
この印象的なカバー絵が、お話の雰囲気を端的に表しています。
つまりはハッピーエンドだということ。
でもそこまでに至る互いの気持ちのすれ違いを、
時にコミカルに、時に体の奥底から絞り出すように描く構成力が抜群に上手いのです。
中学生の少年と、社会人の女性との恋。
それは大人びた態度で背伸びをする少年と、年上としてリードしたい女性との恋の駆け引き。
相手を好きであるが故に、対等の相手として認めてもらいたい少年。
そしてそんなポーカーフェイスの少年にまんまとしてやられ、大人の余裕を見せるどころか
少年を子供扱いしていることを見透かされ、逆に赤面させられっぱなしの女性。
しかし最後に「大人の囁き」で、少年のポーカーフェイスを崩しておあいこに持ち込んだりと
同じ学校に通うカップルなら自然と互いのポジションが決まるものが、
攻守がめまぐるしく変わる主導権争いをするこのいちゃつきが、
若干手練れの中坊っぷりにファンタジー色は否めませんが、実にコミカルで面白いんです。
そしてそんな二人がなんだかんだで付き合いを続け、5年の後…
大学生になり青年に成長した彼が、遂に彼女にプロポーズをするところからの流れが、うわぁっときます。
彼が少年から青年へと眩しいほどに「成長」したのと対照的に、5つ年老いただけの自分。
彼の気持ちを受け止める自信がないと、そこから彼女がとった行動、
そしてそれに対して青年が伝えた想い…
これはヤバいわ、カッコよすぎだわ~(;´▽`A``
その後の最終話もとても印象的で、小憎らしいほど綺麗にまとめてくるんですよ。
話の切れ目に挿入されるカラーのイラストも心憎い演出です。
このお話を読んですぐに想起したのが、
女性同士の年の差恋愛に悩む「純水アドレッセンス」でした。
若者らしい一途さで、肝心なところでかわそうとするセンセイを追いかけて
遂にはその覚悟を受け容れさせてカップルになるアドレッセンスとは、
若干躊躇させる要素の違いはあれども、決定的な年の差に懊悩する「大人の女性」が
とても愛おしく、可愛い、恋する乙女として描かれることは共通しています。
いや もう ほんとに。
ラストはキュン死しますよ!
水谷フーカさんのHP → 猫街
2010-12-22 04:37
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