青血のハグルマ [ファンタジー]
僕は木林(キリン)をっ… こんな事をするために作ったんじゃない!!
「僕は、人殺しの道具を作っていたのですか? 父上…」
昏い瞳。
少年は薄幕の向うに座す、青き血の王に問うた。
『断じて奴らを、人などと呼ぶな!!』
刹那、王から返ってきた雷鳴に似た怒声に、一瞬で少年の心は縮こまる。
しかしここで引くわけにはいかなかった。
今まで自分が父王に言われるまま無邪気に創りつづけてきたあの機械が…
戦火の復興を手助けする力となるハズだった、僕の人型の「ハグルマ」が―
父王が「非族」と呼び、「欲にまみれた獣以下の存在」と蛇蝎の如く忌み嫌う「赤き血の一族」を
虫けらのように殺す道具と成り果てているのを、彼は非難せずにはいられなかった。
「でも 僕には…とてもっ…そうは見えなかった…!!」
非道で非情なはずの赤き血の一族…
だが、彼が昨夜出会った赤き血の少女は、「ハグルマ」に兄をゴミのように殺され、
その亡骸(なきがら)にすがって慟哭する自分と同じ「人間」だったのだ―!
webコミック クラブサンデーにて連載。
発売日のちょっと前に、普通の少年誌のコミックスのような形態でありながら、
単行本にカラーページが挿入されるという一風変わった構成が話題になったので読んでみました。
数で優る「赤き血の一族」と、彼らを遥かに凌ぐ技術力を持つ「青血(せいけつ)の一族」。
かつては共存していた2つの種族が相争う世界を舞台にした、ファンタジーです。
他は色々と抜けているが、青血の一族の中で跳びぬけた技術力を持って
王国内の数々の機械を発明してきた第三王子・コド。
外の世界を知らず、人のためと信じてひたすら発明をし続けてきた彼の機械が、
実際は人殺しの道具として使われていたことを知り国を出奔する物語。
戦闘に長けた少年ではなく、子供の頃友人へのプレゼントに空飛ぶ巨大鯨をつくって
ド肝を抜いたこともある天才的な技術者、というのが珍しいですね。
そして彼が戦うのは、そうとは知らずに自分が創りだし、
中には何ものかによって人殺しの改造も受けた殺戮兵器たち。
自分が犯してしまった罪をほろぼす、みたいな悲愴な決意を持った表情が
実に印象に残る形で描かれています。
特筆すべきはそのコド王子の表情です。
自分の機械が目の前で惨劇を引き起こすのを見て震える表情。
今まで無邪気に信じていたものが次々と裏切られていき、
そのたびに顔を歪ませて耐え、あるいは訴え、そして決意をもって立ち向かう表情が実に良い!
この物語のキーとなるらしい青血や赤血が部分的にカラーで描かれる
噂の印象的なページも美しく、いい感じなのですが、
今ひとつ強烈なインパクトを残すほどでもなく、少し期待しすぎていた分残念な印象(;´▽`A``
でも表紙と中のカラーページに入っている絵を見る限り、この著者さんの真骨頂は
カラーの色使いにあるようですので、紙の単行本で出すならこういう形態は理想的なのでしょうね。
Webで1話目が読めます。
Webで公開されている部分に関しては、恐らくWebでご覧になったほうが、
この漫画の良さはより感じられるんじゃないかなあと思います。
クラブサンデー内 青血のハグルマページ
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