女の穴 [恋愛]
そうでもなければ
そうじゃなければ
コミックリュウにて掲載、1巻完結。
現在も復刊されたコミックリュウやスピカなどで連載をされている ふみ ふみこさんの処女作品集です。
表題作の「女の穴」にリュウ掲載分の「女の頭」「女の豚」、そして描きおろしの「女の鬼」におまけマンガを加えた計5話からなる短篇集。月刊フリースタイルで企画された年間のコミックランキング「このマンガを読め!2012」にもランクインされた本を今回はご紹介してみます。
ふみふみこさんの描く 可愛くてエロくて純粋で、そしてエグみのある女の子たち。
2009年に「西島大介のひらめき☆マンガ学校」に参加されたこともあるという著者の、読後に何か心にしこりのようなものを残す物語です。
表題作の「女の穴」は、卒業式間際に「自分は宇宙人で、人間と子作りをしてこいと言われているのでHしてほしい」と担任の先生に迫る女子高生のお話。
およそ感情を感じさせない淡々とした彼女の態度に、半信半疑ながらも「据え膳喰わぬは‥」とばかりに応じる先生。なんとも苦笑するばかりだけれど、その時に彼は確信する。
「ああこいつ 人間じゃないわ」
底のしれない深くて暗い穴。なんとも不気味な虚無をたたえたその瞳。
けれど彼女に付き合うにつれて、先生の中でその無愛想極まりない彼女への感情が変化していく。
男とは根本的に何かがちがう、理解不能の存在。
けれどそんな彼女に対して芽生えた自分の中の感情に、度々首をひねる彼‥
ああそうか、これが恋というものか―!?
ミステリアスなところに惹かれたのか、それとも稀に垣間見せる純粋さになのか‥
何とも切ない甘酸っぱさを感じさせるラストも素晴らしい。
「女の頭」は兄に対して禁断の想いを抱える妹の後頭部に、事故で亡くなったハズの兄の顔が人面疽として現れる、というシチュエーションの物語。
頭が繋がって、自分の狂おしいほどの恋心を兄にぶつける妹。
とにかくこのなりふり構わぬ恋の突破力が実に印象的な作品です。
その後兄が妹を想って心を閉ざすのに対して、妹のとった癇癪にも似た大胆な行動は何とも女性的!
当て馬に使われた伊藤君には同情を禁じ得ないのではありますが。(^_^;)
「女の豚」はハゲでチビでデブで同性愛者の中年男性教師の弱みを握り、豚扱いして虐げ続ける女子高生の倒錯した愛情の物語。描きおろしの「女の鬼」を加えてこの2作は恋に狂った女の子の、痛々しくも切ない物語として出色の出来。
こんなにもこんなにもこんなにも好きなのに、あなたは私に振り向いてくれない。
ならばいっそ‥!
と般若の形相になる少女の叫びが胸に刺さります。
そして思わず「うわあ‥」(^_^;)と苦笑いさせてくれる余韻を残すラストもまた、最後まで心をざわつかせてくれる良い締めだと思います。
ふみふみこさんの描くふんわりと柔らかそうな身体のラインと、そこから醸し出される「純粋」で「清らか」な「処女性」をたたえた女の子たち。そんな彼女らが時に底知れず、時に純粋で、時に狂おしいほどの暴風となって男たちを惑わせる、とても印象に残る作品集でした。
あ‥あとおまけの4コマと16コマ、それからカバー裏は必見です。
デフォルメされたキャラクターによるコメディ仕立てで、どぎついところもある本編に対する食後のデザートみたいな清涼感を与えてくれますよ。
ふみふみこさんのwebページ → ふみふみこ ふんだりけったり
ふみふみこさんのブログ → むりをしない
西島大介のひらめき☆マンガ学校(講談社BOXによる漫画家養成企画なのだそうです)
→公式HP(ふみふみこさんのレポートマンガも読めます)
Pixivで公開中の女の穴のカバーイラストやボツネーム、キャラ設定他(ぺたり)
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