ミトコン

ミトコン 1 (ジャンプコミックス)

• 作者: 漫☆画太郎
• 出版社/メーカー: 集英社
• 発売日: 2011/07/04
• メディア: コミック

はうぁ！

今回大変遅ればせながら、漫☆画太郎先生の漫画を初めて拝見する機会を得ました。
ん…んんー？(;´▽｀A``
凄い、ある意味凄い！　漫☆画太郎先生！
「きっと釣りだろう？」と可愛らしい女の子が描いてある表紙を眺めつつ
中をめくってみたら作中にちゃんと出てくる。肩透かしか？と思ったらどっこい
殴り描いたような絵があったり、あちこちに同じシーンをそのままコピーして
貼り付けてあったりする。
つっこんだら負け…負けなのか！？(;´▽｀A``
でもところどころの絵は凄く巧いし、間に合わなくてこうした、というんじゃなくて
「技法」として確立している…いや、周囲に「確立している」と認めさせているところが凄い。

今回はそんな画太郎先生のファンの方であれば「何を今更…」というようなことを
羅列するようなレビューになるかと思います。

ジャンプSQにて連載。
とあるファンタジーの国・ミトコンドリア王国。
その国の主であるミトコンドリア大王は、孫娘を溺愛し、溺愛するあまり
まるで自分の宝物を大事に仕舞いこむかのように、孫娘のマゴコンドリア姫を
生まれた時からお城の奥深くに閉じ込めていた…
外に出たくてたまらない姫。
しかしお目付け役の汁ばあさんと屈強な衛兵たちの警備の前に
当時3歳の彼女が太刀打ちできるはずも無く…
自殺をも考えていたその時、城にまんまと潜入しお宝を奪って華麗に去っていく
伝説の怪盗・パパンの姿を見て、自殺を取りやめこの城から脱出するための
どろぼうの知識を猛烈に勉強することになる。
そして10年の月日は流れ―
ついにその時は訪れた。
姫はまんまと警備を偽り城を脱出すると、憧れの怪盗パパンのように
悪い人からお金を盗みながら、パパン二世と共に世界中を冒険する旅に出る。
既にボケが進行していたパパンが自らばら撒いた
「願いの叶わない７つのボール」を回収するために…！

あらすじだけ抜き出すとこんな感じでファンタジー漫画の王道のような出だしなのですが、
序盤からいきなりページをめくる度に次から次へと謎の登場人物の正体が明かされたり、
新事実が発覚して二転三転する物語。
事前の伏線とかおかまいなしにページをめくった時にドーン！とその意外な事実が大ゴマで描かれ
相手が「えぇーーーっ！？」と驚く、驚きまくる展開。
そして城から脱走したマゴコンドリア姫と、偶然出会ったパパンの娘・パパン二世に、
すっかりボケておじいさんと化したパパンや、姫を捕まえにやってきた大王らが
次から次へと襲い掛かる。
容赦なくいきなりヒロインが殺され、大逆転し、そして生き返る展開。
今どきこれほどに思い切りの良いナンセンスなギャグマンガが描けることに
途中でつっこむのも疲れて、ページをめくると明かされる驚きの展開に、
素直に身を委ねようと思えてしまいます。
そのギャグが面白いというより、「あーそーなのねー」と両手ぶらりのノーガードで
次々と変転していくお話の小気味良いテンポを楽しもうという気になるというか…



ツッコミどころは作画の面にも大いにあります。
コピーを使って複写したことが明らかなコマの複製、同じコマ内に配置されたモブや宝物なども
同じページ内、更には同じコマ内ですらコピーした絵が2回、3回と配置されています。
一見明らかに手抜きなんだけど…せめて読み手に分からないように巧く誤魔化してやってよと
思いつつも、まるで雑誌の投稿コーナーで「決められた絵の4コマのセリフを埋めて送ってね～」
という企画を彷彿とさせるほど、同じ絵をコピペで羅列してもセリフや効果線のかけかたや
拡縮を駆使して出来上がったものを読むと、逆にこうすることで「テンポの良さが出せている」
と言えてしまうあたり、並みの技術ではありません。
そしてその技術で浮いたリソースを、怪物やじじ・ばばのやたら細かいディテールに注ぎ込む
この思い切りの良さ！　お話の筋から言うと、すぐ死んじゃう役のばばあをそんなに描き込む
必要は無いのだけど、何か執念めいたものを感じて思わず口をつぐんでしまうくらい迫力があります。



散々持ち上げましたが、全体を眺めるとナンセンスであり、爆笑したかというとそうでもない。
ぐいぐい押し付けてくる力技の展開で間違いなく自分の好みとは異なるのですが、
死ぬまでに一作は画太郎先生の作品をご覧になると良いんじゃないかと思います。
ああ、漫画ってこういう風に作っていいんだ…　と目から鱗が落ちました。