おいでませり [ファンタジー]
日々楽しく暮らすこと! 他になにがあるって言うのよ!
大穀倉地帯に佇む巨大な樹に寄り添い、人々が生活を営む町・だいだい町。
宇宙の航路は遥か彼方まで開かれ、異星文化が花開くこの町にセリさんがやってきた。
彼女のモットーは「がんばらないこと」。
気の向くまま 足の向くまま ふらりふらりと町のあちこちに出没しては、
面白そうなことに首を突っ込んだり、成り行きでバイトさせられたり…
セリさんと彼女を取り巻く人々の日常を描いたゆったりSFファンタジー
ヤングキングアワーズで連載。全3巻。
「水惑星年代記」など、柔らかい筆致でSFやファンタジー作品を描かれている方のようです。
これまたTwitterの漫画読みの方の間で話題になったタイトルだったため拝見してみました。
見た目は美人のお姉さんだが、ほっといたらどこまでもだらけるずぼらな性格のセリさん。
彼女が伯父の代わりに古書店を切り盛りするため、だいだい町にやってくる
…という設定は、いきなりトラブルで店の棚という棚の本をぶちまけてしまってからは
開店することもせずに放置状態(;´▽`A`` ご近所さんで家族でレストランを営む家の娘で
しっかり者のアマショクちゃんがセリさんをせっついて整理させようとしたのですが、
ずぼらなセリさんが相手では上手くいかず、しかもその近くに別に家を建てたため
ほぼ忘れられた設定となっております。
仕事はキライ。出来るだけ楽して楽しいことだけして過ごしたい。
なんともお気楽極楽なセリさん。
可能であれば支払いはツケにして、それを誤魔化して踏み倒そうとしたり、
楽しいことにはやたらアクティブで、思い立ったら町の遥か遠くまでいきなり旅に出かけたり、
いよいよ生活費がなくなった時や、借金を労働で払わされている時だけ、
ちょこっとだけバイトをしてみたりするセリさんの日々が描かれます。
出てくるキャラクターも個性的な面々で、アマショクちゃんとその家族ををはじめ、
セリと行動を共にする猫のツナカン、度々仕事先でセリさんと鉢合わせしては、
トホホ役にされる「やきとり屋」コンビ、セリの家に居候するブラウニー族の小人・ウニちゃん、
国の権力者で、たまに下界に降りてきてはセリにちょっかいを出してくるジャジャム様等等…
主にだいだい町という箱庭で様々にセリさんと関わってきます。
セリさんの底抜けに明るくて、なんとかなるさあ の性格も魅力的なのですが、
もう一つ魅力なのが町の情景ですね。
非常に立体的なつくりをしていて、あちらこちらに土手があったり、階段があったり
何層にも見える家々と緑の折り重なった町並みが、見た目に非常に面白い。
いろんなところに抜け道がありそうな感じ…ていうのかな、なんかいつもと違う道を行ったら
意外なところに出ちゃうような、そんな町中をセリさんは歩き回るんですね。
1年中終わらない夏休みを過ごしているかのような、楽しみに満ち溢れた作品でした。
最後はセリさんのちょっと切なくなる過去が語られて大団円のこの物語。
笑ったり泣いたり落ち込んだり怒ったり…たまにお姉さんぶって仕切ったり、
かといえばやっぱり駄々をこねる子供だったり…セリさんの魅力がいっぱいに描かれています。
基本ハートフルというよりはコミカル路線ですので、肩に力入れずに気軽に読めますよ。
大石まさる氏のHP → 大石工画店
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