あのころ俺は女子校生 [コメディ]
ただひとつ言えることは 女の子として青春を送れたことに感謝しているということ…
少女の側から少女の目線で世の中を見れたこと…そして「女」の側から男を見れたこと…
「少女」として育ってきて、30代から「男性」になる…
女装? 性転換? いえいえ
それはどちらでもなく、どちらでもある立派な体質なのです。
今回ご紹介するのは、「染色体異常」によって「性別があいまい」という
実に特異な体質をお持ちの著者・新井祥さんによる自伝的マンガをご紹介します。
ホルモンバランスによって身体的にも精神的にも、男らしい時もあり、女らしくなる時もある。
そんな体質に翻弄されつつも、驚くほどの決断力でその時その時を生きてきた、
その半生は実にユニークなものでした。
週刊漫画TIMESにて連載。全1巻。
可愛らしい女の子のイラストに荒めのトーン。
江口寿史さんの描くようなポップな色使いの表紙に惹かれ、
その本を手にとってフラフラとレジへ。
そして帯を外してびっくり…!
「…すね毛?」(;´▽`A``
「中性マンガ家」と称される新井さんの作品との、これが初めての出会いでした。
お話は、現代の新井さんが幼少期から、社会に出て様々なアルバイトを経験していく
当時を振り返って、当時の自分が思っていたことなどを漫画アシスタントのこう君に語る形式で
展開します。
おかまでもおなべでもない。
20代に「染色体の異常で身体的に男性・女性いずれとも言い切れない身体」であると知るまでの
新井さんの幼少時代は、ちょっと大柄で、ちょっとがっしりしていて、ちょっと腕力もあって、
乙女ちっくな夢も持っているけど、女子より男子と遊ぶのが好きという女の子でした。
シモの話で恐縮ですが、股間の男性の部分は新井さんには無く、ムネもあった新井さん。
戸籍上は現在も「女性」ということになっています。
それが第2次性徴を迎え、ぐっと男性ホルモン優位になると、身体はますます男の子っぽくなり、
ヒゲもすね毛も生えてきて、趣向にも変化が現れます。
それまで付き合っていた男子とは別れ、女子と付き合い始めるようになると、
それ系の雑誌の投稿欄で出会った同性愛者の人たちと交流を持つようになって行くのです。
自分の特徴を知ってからは、様々なアルバイト経験をしながら
当時のバブル景気を背景とした「男らしさ」や「女らしさ」のスタイルや価値観を、
女性的な視点で描いていきます。
通して読んでみて、とにかく新井さんの異常なポジティブさ加減が非常に心に残りました。
自分は男なのか、女なのか?作中でも思い悩むシーンが無いとはいえませんが、
若者らしい順応性を発揮し、あっけないほど昨日とは全く異なる今日の自分の価値観を受け入れます。
そして非常にまっすぐで、正直に「すき」「きらい」を示していく姿が男らしい。(;´▽`A``
30代になって、ホルモン注射とムネを小さくする手術を受け、
ヒゲも生やしたおっさん姿となった新井さん。
それでも乙女の心は持ち続け、綺麗な女性も、
そして可愛い男の子にも視線が行ってしまうという新井さん。
なんとも生々しく、それでいてその底なしのポジティブさと行動力がコメディ仕立てになっている本作。
こういう人がいるんだなあ、と。
大変興味深い作品だったと思います。
新井祥さんのblog → 新井祥のクィアな日常
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