ウルトラQ彩色版 [SF]
昭和41年から放映された円谷特技プロダクション制作のテレビ番組・ウルトラQ。
ウルトラと言えばM78星雲の光の国からやってきた超人ウルトラマンが怪獣と格闘する特撮番組が
真っ先にあたまに浮かびますが、その前身・ウルトラシリーズの最初の作品として当時視聴率30%を
越える一大怪獣ブームを巻き起こしたのがこのウルトラQです。
ウルトラQには怪獣と戦うウルトラマンというヒーローは存在しません。
次から次へと地球に現われ大暴れする怪獣や、地球を侵略しにやってきた異星人、
永き眠りから醒めた太古の生物など、実に様々な怪奇なるものたちの出現に、
あくまでも人間たちが知恵と科学の力を結集して対抗するというお話になっています。
そのウルトラQが間もなくBlu-rayで発売されることに先立って、藤原カムイさんが2003年に
ニュータイプ誌上でコミカライズした同作品が再度発売されることになったようです。
しかも今回のBlu-ray化にあたっての一つの目玉である当時モノクロだった画面をカラー化するという
企画にちなんで、今回のマンガも一部の話がカラーリングされる「彩色版」となっています。
Newtype THE LIVEにて連載。全1巻。
コミカライズを担当したのは「雷火」や「ドラゴンクエスト列伝ロトの紋章」シリーズなどを手がけた
藤原カムイさん。お名前は当然存じ上げていたのですが、実際に作品を拝見したのは
ほぼ初めてと言ってもいいくらいの浅さだったりします(;´▽`A``
収録されている作品は
「ペギラが来た!」 「地底特急西へ」 「バルンガ」
「ガラダマ」 「2020年の挑戦」 「悪魔ッ子」
の6作品。巻末にはコミカライズされなかった他の話に出て来る怪獣の紹介が描かれた
「怪獣図鑑」なるものが収録されています。
まず1ページ目を開くと早速カラーの扉が出てきます。
そこには怪獣の怪力によってぐんにゃりと力なくへり曲がった東京タワー。
そして勝ち誇るように両腕の翼を広げて見下ろす、一本角と鋭い牙を持つ冷凍怪獣ペギラ。
同様に東京の街をのし歩く誘拐怪人・ケムール人や隕石怪獣ガラモンなど
所狭しとこのマンガに登場する怪獣・怪人の類が描かれています。
いやあ いいなあ…特に何かにつけて東京タワーが象徴的に描かれる昭和の雰囲気。
そして高度成長の時代にあって、夢の超特急・宇宙への進出と次々と革新的な新技術の
成功をおさめる陰で、人類の高々と掲げた鼻っ柱をへし折るがごとき
人類の常識が通用しない謎の生物達の襲来。彼らに力で対抗できるウルトラマンという
存在が無いこのウルトラQにおいては、いずれもスッキリと打ち倒すことができず、
人類の知恵と科学力を結集して、散々暴れ回った怪獣をどうにか追い払う程度の
成果しか挙げられないのです。これがなんかすごくいいんですよね~
主な登場人物は毎日新報報道カメラマンで好奇心旺盛な女性・江戸川由利子と
彼女の知り合いで様々な乗り物を乗りこなす星川航空パイロットの万城目淳、
そして万城目を慕うパイロット助手の戸川一平の3人で、
毎回彼らが様々な奇怪な事件に遭遇するというもの。
これに世界的な権威を持つ学者で、3人のアドバイザー的役割をもつ
一の谷博士が加われば、もうああいかにも空想科学物語…!
なんかオラわくわくしてきたぞってなもんです。
絵柄はやはりTV版のイメージに極力近づけたいとの意志なのか、
青年誌ぽい、イメージとしては浦沢直樹さんの絵のような、劇画じゃないんだけどリアル志向の絵柄。
ちょっと淡い目の水彩調の色づかいがともすれば子供向けの荒唐無稽と捕らえられがちな
「怪獣」のどぎつさを、不気味に、リアルに演出しています。
特にガラモンのゴツゴツした背中の色合いとか好きだなあ。
当時最新鋭の科学技術だったもの以外にも、列車や車、モノクロだった新聞とか
コック帽をかぶった洋食屋、斜線が入った縞々模様の信号機、年季の入ったコンクリや
レンガ造りの建物群など、しっかりと描き込まれたこの時代の風景が
しっかりとこの時代の映像作品のもつ匂い、ノスタルジーを感じさせてくれます。
単純に怪獣をどう撃退するかを見るマンガなだけじゃないんですよ。
怪獣が当時の街を徘徊する、その風景がいいんですよ。
藤原カムイさんのwebサイト → KAMUI'S NOTE
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