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夜明けの図書館 [ハートフル]


夜明けの図書館 (ジュールコミックス)

夜明けの図書館 (ジュールコミックス)

  • 作者: 埜納 タオ
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2011/10/17
  • メディア: コミック


そー レファレンスって発見の連続なのよね

みなさんは図書館をどのくらい利用されてるでしょうか。
私が図書館を沢山利用していたのは子供の頃、そして大学浪人の頃あたりでしょうか。
時間はある。…けどお金は無い!
という時に「何でもいいからタダで楽しめる娯楽を!」ということでよく利用させてもらってました。
思えば手塚治虫の「ブラックジャック」も浦沢直樹の「マスターキートン」も、梶原一騎の「あしたのジョー」も、井上雄彦の「SLAM DUNK」も田中芳樹の「銀河英雄伝説」も、桂米朝の「落語」にもここで出会いました。
都内の図書館ではホームページから図書の予約や他館の図書を最寄の図書館に取り寄せるサービスも行っていて、最新刊を今すぐ!と贅沢さえ言わなければ案外ラノベも豊富に読むことができたりと侮れないものです。
そしてそんな図書館ネットワークを駆使した取り寄せサービスの他に、図書館には「レファレンスサービス」というものがあるそうです。
これは自分が「調べたい、知りたい、けどどの本を見ればよいのか分からない!」という人のために司書さんが資料探しをサポートしてくれるサービスだそうで、そういうのが「レファレンスサービス」なんていう立派な業務の一つとして掲げられているということを実は私、この本を読んで初めて知りました。
本と人を繋ぐサービス―
それ自体はなにも図書館に限定せずとも経験豊富な書店員さんが心に残る本をお薦めする筋の本屋さんを舞台にした物語でも語られているものですが、このレファレンスサービスをテーマにした物語はちょっとそれらとは毛色が異なるアプローチがされていてそれが面白いなと思ったのでご紹介します。

JOURすてきな主婦たち にて連載。全1巻。
先日ご紹介した「草子ブックガイド」「図書館の主」など、ここ最近本に関わるマンガを良く見かける気がするなあ~などと思いながらも、綺麗な色合いの表紙に惹かれて購入してみました。

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内容はやる気と好奇心に満ちた新人司書の葵ひなこ(25)が、毎回図書館にやってくる利用者の奇想天外な「こういう本ない?」という相談に一生懸命応えるというもの。先に挙げた司書や書店員さんたちと異なるのはおしりの殻も取れないぴよぴよの新人司書であるという点。何十万冊という収蔵量を誇る文字通り知識の森である図書館でひなこの受けたとあるおじいちゃんからの相談は―
「子供の頃に山の手のなんとかっていう町にあった郵便局舎の写真が載ってる本はないか」
というものだったりします。
え?何町?何年前?えーと…書名の一部だけでもご存じない?(;´▽`A``
今は書名の一部からでも自身で検索することができるシステムが当たり前に置いてあり、インターネットを駆使すれば大抵のことは調べられる時代。しかしこの曖昧模糊とした記憶では検索ワードを考えるだけでもホネです。そこをひなこさんは粘り強くおじいちゃんの記憶を掘り起こすようにヒアリングを行い、いくつかの「あたり」をつけていきます。
さきに挙げたマンガと大きくアプローチが異なる点はここで、レファレンスをテーマにしたこのマンガは、経験豊富な書店員や司書が魔法のようにその人に合った本を出してみせるという形ではなく、その人が求めている本を様々なアプローチで探し出す「本の探偵」みたいなお話になっているのです。

このレファレンスには現実にも実に奇想天外なものが多々寄せられているようで、その司書に向けた効率的なレファレンスのコツを著した著書も結構存在しています。図書館員向けの雑誌というのも存在するのですが、そこでは相談者に満足してもらえるレファレンスをテーマにした記事や、勉強会が開かれる場合もあるそうで…特に事例集などを読むと例えば
「よくライオンの口から水やお湯が出ているが、その由来は?」
「張飛や関羽はどんな料理を食べていたか?」
「宮部みゆきさんの本に登場した『うそつくらっぱ』という児童書を読みたい」
「『萌え』という表現はいつ頃から使われるようになったか?」
などなど、まるで昔夕方にやっていたTBSラジオの「子供電話相談室」かと思わせるような興味深いレファレンス事例が読めたりします。「図書館のプロが教える<調べるコツ>」という本などは機会があったら一読をお薦めしますよ。

少々横道に逸れてしまいましたが、このマンガの面白みは先ほどのおじいちゃんのような曖昧な情報から、ベテランの先輩司書さんを巻き込んで目的の本を探すシーンが多く描かれる点です。相談者に都度ヒアリングをしながら「昔のこの辺の写真なら『郷土史』コーナーにあるんじゃないか?」とか、「賞をとった写真家ということなら『写真集』のコーナーにあるかもしれない」とか「郵便局舎なら『郵政』関連にあるかもしれない」とか多角的に館内の様々な分野からアプローチして粘り強くトライ&エラーを繰り返す姿。
そして時にはそれらしい資料が見つかっても「より相談者の望むものにマッチした資料が他にあるんじゃないか?」と掘り下げていく姿。それは本に関わるキャラクターをテーマにした作品なら誰もが持つ欲求ではありますが、その過程で今回の探しものの本には当てはまらないけれど「こんな本があったんだあ」という発見をするシーンも度々出てきて、閉館後も居残って粘り強く探し続けるひなこが目を輝かせるシーンがとても魅力的なんですよね。

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とはいえ貸し出しや返却、本を元の棚に戻す作業や破損した本の修理などなど…他の業務をこなしながらの作業になるうえに、昨今では人件費削減による効率化が求められ、現実にはなかなかここまできめ細かいサービスがどこでも提供できるものではないのかもしれません。その点が物語中にもちらっと出てきたりして1巻で完結するにはもったいない印象もありました。
幕間のおまけまんがで著者の埜納タオさんが司書さんに「レファレンスの本をおしえてください」というレファレンスを依頼する、なんてちょっと面白いこぼれ話もあって、なんか私も機会があればレファレンスをお願いしてみたいなあと思わせてくれる作品でございました。


埜納タオさんのblog → ringogumi~埜納タオ
こちらもおススメ!↓

図書館のプロが教える“調べるコツ”―誰でも使えるレファレンス・サービス事例集

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  • 作者: 浅野 高史
  • 出版社/メーカー: 柏書房
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本



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