姉の結婚 [恋愛]
愛しています
私は岩谷ヨリ 39歳 図書館勤務―
なんだかんだで東京から故郷へ帰ってきて早2年、今は気ままな独身貴族。
女としての人生はそろそろ終わろうとしているけれど
「ここで老いるのも悪くない」
―そう思うと何か色々気が楽になってきて、これからはまるで隠居の身のような
静かで穏やかなプチ老後を送るつもりでいたのだ…あの日までは。
その男性は真木誠
メンタルクリニックの医師を勤めるかたわら、大学の講師を兼任し著者も多数。
おまけに超イケメン…
そんな売れっ子センセイに、ひっそり枯れゆく覚悟の私が
まさか追い掛け回されることになろうとは…しかも彼は…
平穏。ただそれだけが望みだった私に、突如舞い込む彼と彼の周りのアレやソレ。
私は一体どうなってしまうのか…
…はあ しんどい
flowersにて連載。
西炯子さんといえば、
「そろそろ女としての斜陽を迎えようとしている恋愛に積極的ではない女性」
を主人公にする作家さんという印象が固まりつつあります。(;´▽`A``
「娚の一生」 「ちはるさんの娘」 「ふわふわポリス」
私が読んだ中でもそれだけあり、そしていずれもそんなヒロインが
自身の平穏な生活を(程度の差はあれ)引っ掻き回されてしまうという物語。
今回はヒロインの前に、実は中学の頃から片思いしていたという
元クラスメートの真木が情熱的に迫って来るのです。
なんとも都合の良いお話ではありますが、しかしそこにはアラフォー世代ならではの
様々な恋の障害が立ちはだかり、ヨリさんは無邪気に「トク…ン」などと少女マンガのヒロインよろしく
心音を高鳴らせる気分には到底ならないわけですよ。
イケメンではあるものの、中学の当時は「ホワイト・ポーク」とあだ名されるほどに
今とは似ても似つかない姿をしていた真木。
その頃のコンプレックスを引きずっているのか、
彼のヨリへのアプローチもストーカーまがいで策を弄するきらいがあり、
それが却ってヨリに気味悪がられるという悲劇(?)(;´▽`A``
しかも彼は世間体的にも決してそれが赦される立場ではないハズなのに…。
1巻ではこの追い掛け回す変態ちっくなイケメン・真木と、
その情熱に時に流されそうになりながらも、逃げ回るヨリのコミカルなやりとりが描かれます。
追いかけっこになるシーンのコマ割がスリリングで、図書館からの帰り道で
自宅を知られまいと真木を撒こうとするところや、まだ自分に気付いてない真木を見つけ、
こっそり離れようとするシーンなどは、ちょっとした映画のようなスリルがありました。
巻の途中からは二人に関わるとある女性も出てきて、益々ヨリと真木の間は微妙なカンジに。
この女性とヨリが偶然にも町のあちこちですれ違っていた、というシーンがいくつか描かれるのですが
この辺の「偶然を装った必然」は、ヘタな使い方をすれば醒めてしまうような物語的表現ですが、
二人に関わった周りの人の戸惑う反応や、西 炯子さんらしい一拍間を置く手法が効果的で
笑わされてしまいました。演出過剰と思わせることなくサービス精神てんこ盛りなところは
今作でもきちんと入っています。
アラフォーで自分を着飾ることに興味を喪いつつあるヨリの表現も所々「らしくて」いいですよ。
くしゃみのしかたとか、地味な服装だとか、若干骨ばった体つきだとか、
イケメンに迫られている姉を見かけて恋愛モードで度々けしかける妹にもやたら億劫そうな態度とか…
平穏なおひとり様生活を望んでいるヨリに降って湧いた真木との関係は
この先一体どうなっていくのか、ヨリはどのように変わっていくのか、
西炯子さんならではの安心クォリティ。
タイトルの意味に込められた意味を想像しつつ、次巻を待とうと思います。
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