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笑う大天使 [コメディ]


笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)

笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)

  • 作者: 川原 泉
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 1996/09
  • メディア: 文庫


あたくしったらバカね…
冬の木立のあまりにも美しいたたずまいに心を奪われてつい瞑想に耽ってしまって…
気がついたら詩を口ずさんでおりましたの


良家の子女が通う名門お嬢様学校「聖ミカエル学園」―
幼稚園から短大まで一貫した教育システムを備えるその学び舎に集う少女達は、
よき妻・よき母となるために俗世間から隔離され、大天使ミカエル様の白き翼のもとに
清純で、優雅な学園生活を送っていた…
そんな仔羊たちの園に、迷える仔羊が3人。
元・伯爵家の血を引く 司城文緒
名門大名華族出身の母を持つ 斎木和音
そして一大レストラングループ総帥の令嬢 更科柚子
彼女達はこの学園のアイドルであり、だからお嬢様ばかりの学園にあって、
至極庶民的な正体を猫を被ることによってお互いひた隠しにしてきたのだ。
とあることがきっかけでお互いの本性を知り、親友同士になった3人。
大天使の庇護する乙女の園に不穏な影が忍び寄るとき、
堅い友情で結ばれた大天使・ミカエルの娘たちが奇跡を起こす―!

1987年(昭和62年)花とゆめにて連載。文庫版は全2巻、コミックスでは全3巻。
少女マンガの名作のひとつと謳われ、2006年に実写映画化もされた川原泉さんの代表作です。
私もタイトルくらいは存じ上げていたのですが、偶然本屋で見かけた文庫版の表紙が
とても好みだったのもあって、何回かの邂逅の後購入してみました。

「ごきげんよう」がトレードマーク(?)のお嬢様学校に、
至極庶民的な性格をしたマイノリティな存在として描かれる3人の娘たち。
彼女達は高級なフランス料理よりはアジのひらきを好み、
紅茶とスミレの花の砂糖漬けよりは紅白饅頭をぱくつくことを好む。
そんな似た者同士の3人は、たちまち秘密を共有する親友同士になりました。
物語は他の生徒や先生たちの前では猫を被っているけれど、
3人だけで話している時には途端に話し方も庶民的になっちゃう娘達が、
最近巷を騒がしているお嬢様学校の生徒を狙った誘拐事件に巻き込まれ、
それを3人の活躍で解決する、というコメディテイストの友情物語となっています。

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しかし、一通り読んで感じたのは、実は文庫版にして1巻と2巻の頭まで続く
この本編はあくまでも序章で、むしろ誘拐事件解決後の3人が卒業するまでを描く
続編の3編の物語がこの漫画を名作たらしめているのではないかと思いました。

重要な要素としては、彼女たちそれぞれが抱えている人間関係のストレスにあります。
司城文緒は、伯爵の嫁になったものの姑と折り合いが悪く、夫の死後には
遂に耐え切れなくなり、跡継ぎとなる一人息子を遺して屋敷を去った母を持ち、
姑と母の死後、伯爵家の当主となっていた初めて出会う兄に引き取られ
そのノーブルな環境に打ち解けられないでいる娘。
斎木和音は、生粋のお嬢様だが両親が家庭内離婚状態。
両親は父が連れてきた、和音と年が近いお目付け役の若月という青年に
彼女の養育を押し付け、七五三どころか娘の年齢すら把握されない
冷え切った家庭環境の中にいます。
最後の更科柚子は、家庭的には至極和気藹々として円満だけれど、
学校では上級生のお姉様方に「コロボックルちゃん」と可愛がられ
彼女達のアイドルとして振舞う気苦労を抱えています。

それぞれにフクザツな人間関係を抱える娘たち。
特にそれぞれの親に娘たちが何か働きかけて解決するわけではないのですが、
何かといえば3人は人気の無いところで集まって、お嬢様らしからぬ砕けた口調で
お菓子をぱくつきながら、誰かが悩みを打ち明けると、それを他の二人が励まし、
心の支えになるシーンが描かれます。
これが実に良いんですよね~ もう女の子同士の友情!ってかんじで。
話の仕方も深刻な「わたしどうすれば…(オロオロ)」っていうのではなくて
コミカルと言ってもいいくらいの軽口で、シリアスな話を飄々と話し、
聴くほうもそれで何か彼女のために働きかけたりしないで
ただ意見を言ったり聴いて同調するだけだったりします。
でも彼女達の間ではそれだけで十分なのです。
なぜならば自分の悩みを打ち明けた本人が、別にそれを期待してないから。
自分にはどうしようもない大人の事情に翻弄されながらも、
それを自分の問題としてはっきり割り切ってるんですよね。
すごく芯が強いんですよ、彼女たち。

それから時に彼女達のお嬢様らしからぬ言動や行動に頭を抱えながら、
それでも3人の味方になってくれる男性陣もすごく魅力的。
「オペラ座の怪人」編が私は一番好みのお話だったのですが、
商店街の福引でイギリス旅行に旅立った柚子をおっかけて、
文緒と和音もそれぞれの保護者になんとか働きかけて合流してくるくだりとか、
3人が強く強く結びついているのを印象付けられるし、その後悲劇に遭遇した柚子を、
ヘンにお節介を焼いたりせずに見守る二人の様子が本当に良い。
今はこの文庫版1巻のカバー表紙の3人を見ただけでじわっと来ますよ。

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もしもこの漫画に興味が湧いた方がいらっしゃいましたら、
出来れば花とゆめのコミックス版をお求めになるのが良いようです。
なぜかというと、花とゆめコミックス版には本編内で作者がページの隅に
近況や物語の裏話的な話しを書く1/4スペースというのがあり、これが面白いそうだからです。
とにかく物語を早く読みたくて、本屋で私が購入した文庫版ではこのスペースは省かれているのです。
その内容が良いらしいので、お薦めしておきますです。

川原泉さんへのインタビュー → ジャンプスクエア 川原 泉先生直撃インタビュー!完全版
川原泉さんの非公式ファンサイト → 愚者の楽園
Twitterの川原泉作品の名言を呟くbot → 川原泉bot

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