続・星守る犬 [ハートフル]
大丈夫きっと会えるよ 人でも犬でも 本当に必要なら出会えるさ
私は生来見栄っ張りなので、「絶対泣ける!」とか「感動必至!」とか書いてあると
それだけで3割4割は当たり前に評価を差し引いてしまいます。
でもヘンにマニアックなものばかり読んで、
売れている作品を「あれはダメだよね~」と
他人と一味違った目線で見てますアピールするのもちょっと違う。
適度にミーハー心を忘れないように。
好きなものほど謙虚になるのは難しい。
さて、今回は私にとってそんなマンガの代表格のご紹介です。
「続・星守る犬」
2009年の夏に発売され、話題になった村上たかしさんの「星守る犬」の
アナザーストーリーというべき作品です。「星守る犬」と言えば
年をとり病を得て、長年連れ添った家族にも見放され、手元に残ったのはワゴンに収まるほどの
わずかな家財道具と昔娘が拾ってきた愛犬・ハッピーのみ。
先の見えない一人と一匹が、それでも悲壮感などおくびにも出さず、
面白おかしく南へ南へと旅する様子がおかしくも切ない名作です。
今回はその、もうひとつの物語をご紹介します―
ごっこ [ハートフル]
いいっすよ ボクはヨヨを守るためなら怪物にだってなってやる
それはほとんど衝動的だった。
独り暮らしで ひきこもりのどうしようもない男が、孤独に耐えかね自殺をしようと思い立つ。
しかし、吊るした縄の輪っか越しに覗いた、向かいのマンションの彼女を見たとき、
ボクはいつの間にか彼女をワキに抱えて走っていた。
いつも全身傷だらけでベランダに放り出されていた小さな女の子。
ボクにはそれが高い塔に閉じ込められたお姫様に見えたんだ。
まんまと自分の部屋に少女を連れ込んだボク。
そのまま少女に自分の欲望をぶちまけようとしたその時―
「パパ」
か細い声で少女がボクにそう言った。
その瞬間、潮が引くように衝動は消え去って、ボクは冷静さを取り戻す。
こんなことシてどうする? この先どうなるんだ…?
ボクは彼女とずーっと一緒にいたい おじいになっても一緒にいたい
だから、ボクは今日から少女―ヨヨ子のパパになると決めた。
そうして ボクとヨヨ子は家族になった―
C SCENE (武富智短編集) [ハートフル]
ちゃんとあきらめろや!
いや~ うまいなあ!
「EVIL HEART」の武富智さんの「A SCENE」「B SCENE」に続く短編集
「C SCENE」が発売されました。
青春、とか 人生、とか 括ってしまうとありきたりなんですけれど、
迷い惑ってる主人公たちの心の動きをこれほどダイナミックに描ける人は
そうはいないんじゃないかと。
銀のスプーン [ハートフル]
いっただっきまーす!
母さんが入院することになった―
3年前に父さんは亡くなり、女手ひとつで僕らを育ててくれている母が、
検査入院ということで、家を空けることになった。
家に残されたのは、今年高3で受験生の僕と、
中学1年生の弟の調(しらべ)、そして小学6年生の妹・奏(かなで)。
当初検査後すぐに帰ってこられると思われたが、意外と長引くとその影響はまず僕らの食生活に出た。
入院する前に母さんが作り置きしてくれたカレーとシリアル…
それは好き嫌いというよりも、まだまだ甘えたい盛りの二人に母の不在を印象付けるのだ。
「なんか… つらいこととかあっても おいしいごはん食べたらとりあえず元気でるもんね」
母さんと二人で「これから」の話をしてきたその日、
街で偶然出会った倉科さんの言葉が不意に思い起こされた。
うん そうだね
『いっただっきまーす!』
二人のために作った初めての僕の手料理は、二人の好みの味を加えただけの
料理と言うにもお粗末なものだったけれど、それは何日かぶりのほっとするひと時だった。
(あしたはもっとちゃんとしたごはんを作ろう…)
これからもふたりの笑顔を見るために。
くろよめ [ハートフル]
色々教えて下さい あなた好みの「嫁」になりたいんです!
「嫁が欲しーい!!」
池田光子(35歳)OL 独身―
会社では仕事のデキるバリバリのキャリアウーマンの彼女だが、私生活では恋人もなく、
クリスマスもこうして同僚・真子と二人きりで祝杯を挙げる始末…
「ダンナはいらないからさー 家のこと全部やってくれる若くてカワイイさー!」
「それわかる!アタシもほしーっ」
光子と同じような境遇の真子もすぐさま相槌を打つ。
恋愛なんてしち面倒クサい!
二人はそういう点で気が合った。
「…頭イテー…」
翌日はサイアクな目覚めだった。
何軒ハシゴしただろうか、気がついたら自宅のベッドで眠っていた。
途中から記憶がなくなっている割には、なぜか自分はきちんと寝間着に着替え、化粧も落としている。
二日酔いでまとまらない記憶を手繰り寄せながら、とにもかくにもベッドから起き上がる。すると…
「おはようございます!…二日酔い大丈夫ですか?」
聞き覚えのない声と共に、目の前にすっと水の入ったコップが差し出された。
「…?」
思わず視線をあげると、そこには高校生くらいの見知らぬ少女が立っていた。
ショートカットで子犬のように愛らしい少女。
エプロン姿で遠慮がちに自分を覗き込む、その姿はまるで…
それが、昨晩光子が酔った勢いで契約した「世界嫁派遣協会」の夜芽との出会いだった―
侍っ子 [ハートフル]
しかし 泣くだろな寂しくって…会いたくって… もちろん!そうなるのは拙者のほうだが……
関谷ひさしさんという漫画家さんの作品を拝見しました。
1928年(昭和3年)に生まれ、太平洋戦争を経て終戦後は新聞社で四コマを描いて漫画家デビュー。
その後は2008年2月・80歳で亡くなられるまでマンガを執筆されていたという、
昭和の時代を生きた漫画家さんの一人です。
主に昭和30年代に活躍され、当時の雑誌「冒険王」で発表された
「ジャジャ馬くん」のヒットを皮切りに、先生のマンガを好きで読んでいたという方の間では
「ストップ!にいちゃん」という作品を代表作として挙げる方が多いようです。
今回ご紹介するのはその先生が、70歳の頃から亡くなられる直前までの10年をかけ、
作品を完成させたというまさに遺作となったこの作品をご紹介します。
しかし決してノスタルジーとか記念碑的な意図で採りあげるものではありません。
読み終えて改めて「これが70代の漫画家の作品か!」と驚きをもってご紹介するものです。
鉄道少女漫画 [ハートフル]
全部大事に持っててくれてたの…
「呼出し一」の単行本発売後、自身の体調不良を理由に活動を停止されている
中村明日美子さんの単行本が発売されました。
タイトルどおりの駅と電車(主に小田急線)を舞台にした連作短編集で、
初出は2008年~2010年6月までのものになります。
復調されてからの作品というわけではないようなのがちょっと残念ですが、
とまれ描き下ろしも入ったちょっと面白い短編集なのでご紹介したいと思います。
やさしいセカイのつくりかた [ハートフル]
けど先生 誰かが気付いてくれないと手を掴むことすらできないんですよ…
とかくこの世は金が要る
「ああ 憂鬱だ…」
飛び級して19にしてアメリカの大学院で手がけていた僕の研究は
不況のあおりを受けて出資者を喪い、遂に頓挫した。
久方ぶりにこうして日本に戻ってきたのは、バカンスなどではなく
あくまでも研究を継続する資金を得るため、仕事のためだった。
女子校の講師。
それが日本で偶然再会した、高校時代の恩師が用意した僕の新しいポストだった。
校門をくぐると周囲は女子ばかり。
僕は彼女達とあまり変わらない年齢ということもあって、容赦の無い好奇の目に晒されることになった。
(…覚悟を決めろ)
深呼吸をして、今日から自分が担任になる教室に足を踏み入れる。
そしてこの学校で、僕は武藤葵と草壁ハルカという二人の少女と出会うことになった…
コミックいわて [ハートフル]
オハナホロホロ [ハートフル]
かかとをみっつ鳴らしてごらん そしてこう唱えるの…
みちるとは5年くらいまで一緒に暮らした ある日ふらっと いなくなって
次に会った時 みちるには立派なコブがついていた―
わたしとみちる、そしてみちるの息子のゆうたくんと、同じマンションに住む青年・ニコ君。
みちるとゆうたくん以外は全くの赤の他人同士の、それは奇妙な同居生活。
仕事に出ているみちるの代わりに、ゆうたくんの保育園の送り迎えをするのは
大抵在宅の仕事をもつわたしの役目。
少々内向的だけれどとても素直でプリンに目がなくて、石を集めるのが大好きなゆうたくん。
「そこがいいんだよ!」
と、遊びに来ているときは片時もゆうたくんの側を離れないニコ君が、
自分の膝の上で眠ってしまった幼子の姿に蕩けるような笑顔を向けながら言う。
母親であるはずの みちるは、帰宅時に楽しみにしていたらしいプリンを
それとは知らずに食べてしまった わたしたちへの抗議を込めて早々にふて寝してしまった。
その奔放さはママになる前―私と同棲していた頃とちっとも変わらない。
この奇妙な家族関係が始まって早1年…
けれど わたしたちは永遠などは願わない。
願ったら叶わなくなると知っているから―